見出し画像

小澤メモ|HELLO PANDA|パンダのこと。

9 成都のネタ的思い出 2。

熊猫大道ディスタンシング。
あくまでも主観で書くけれど、日本にいると、割り込みをはじめマナー違反大国のイメージが先行しがちな中国。それはマナーを守るのがスタンダードな国では、当然浮いてくる。しかし、こちらが思うマナーがないのがスタンダードな国だったら、当然それでは何もできなくなってしまう。恐怖なくらい速い車の横を、マイペースに走る壊れかけのバイクや自転車。あと歩行者も! それが何台も何人も。しかも朝早くから。そんな大通り事情を見ただけで、(あ、この国はタフなのが当たり前なんだな。より生々しい感じなんだな。日本ではそれだと浮いたり、ディスられるけれど、この国ではそれくらいがちょうどいいんだな)と勝手に感じ入ってしまった。それが正しいか正しくないかではなくて、この国の生き方っていうのがあるんだなと。それを他の国にプッシュしてくるのはまた別の話。それでも、郷に入れば郷に従えで、この体感は中国での撮影において大いに役立った。

成都で思い出した大好きな映画。
成都滞在中、激しく思い出していたのは、チャン・イーモウ監督の映画『活きる』だった。作品の舞台になったのは、1940年代から1960年代の文化大革命の中国。その頃の街の風景と違って、現在の成都中心部は、高層ビルが林立しネオンが輝き、だいぶアーバンな感じだ。しかし、一本裏路地に入れば、すぐにタイムスリップしたような気になる。それに、やっぱり行き交う人々のモノが違う。『活きる』のままに、たくましく映る。悪く言えば粗野で煩雑な、よく言えば生命力に溢れてる感じ。そう思っていると、後ろからダダダとぶつかりながら追い抜いていったおばちゃんの横顔が、コン・リー演じるチアチェンに見えてくるから不思議だ。これはみんながイエス!ってわけじゃないのはわかっている。個人的に、行った先々で街のルールや風土を感じ取って、順応させていくのが得意だからっていうのもあるだろう。

鷲掴み饅頭(マントウ)。
そういえば、成都では一度もスケーターを見なかったが、中国でも上海や香港で人気が高い。とかく対立構造がニュースになる中国とアメリカ。しかし、ユースカルチャーレベルでは、スケボーを通じて様々な共有が生まれている。とにかく、たくさんのパンダが暮らすこの街は、がやがやと活き活きしていた。まあ、なかなかハードボイルドだけど。嫌いじゃない。旅の最終日。初めてホテルで朝食をとった(それまでは朝食時間のだいぶ前から撮影に入っていた)。アドベンチャーワールドに行ったとき定宿にしているホテルと同じ、バイキングスタイル。というか、どこでもお馴染みのスタイルだけれども。それで、蒸し饅頭コーナーに並んでいたら、現地のおじさんグループが、饅頭を鷲掴みにして、1つ1つ、中の具を確認していた。それで、(たぶん)具が入っているタイプのは蒸し器に戻していく。そのとき、ピンときた。『活きる』でも、物語の重要なプロップスとして、饅頭とマントウ(人物)が登場する。それで、現地の人からしたら、饅頭は具はないものを指す。ホテル側は、観光客のために肉まんよろしく高菜など具をアラカルトにして提供していた。それで、おじさんは、具なしの本当の饅頭だけを食べたくて、ご丁寧に素手で鷲掴み、中身を確認していたのだろう。とりあえず、トラディショナルな饅頭に敬意を表して、ピックするのはやめておいた。先に起きて、すでに食べはじめていた中田くんと編集の相沢くんやロさんがいるテーブルへ。中田くんが「この肉まん、美味しいですよ!」と言って、饅頭をいくつか盛った皿を回してくれる。やさしいね。念のため、饅頭を1つ1つ確認してみた。オオ!、お見事。もれなくパックリと真ん中が割られて具がはだけている。もちろん、中田くんや相沢くんが手にしているそれも割れていた。「中田くん、それは肉まんじゃないよ。マントウっていうんだよ」と、微笑んでおいた。活きる!!! 9
(写真は成都の飲食店街/2018)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?