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【第15回】ロシアのウクライナ侵略と東アジアの中の日本

【21世紀における覇権争いとウクライナ戦争の勃発】(2000年~2022年)
【第15回】ロシアのウクライナ侵略と東アジアの中の日本  
第15回≪問い≫
1.テーマ:ロシアのクリミア占領・ウクライナ侵攻と排外主義の高まり
・ロシアはなぜウクライナに侵攻したか?
2.テーマ:平和と人権のための取り組み
・非人道的兵器禁止条約の締結、国連改革運動・非同盟運動などは、戦争危機に対しどのよ
うな有効性をもつか?
3.テーマ:東アジア情勢と日本の位置
・世界的な大強国となりつつある中国、大型ミサイルを発射し続ける北朝鮮、歴史認識問題を迫る韓国など、東アジアのなかで日本は自らをどう位置づけるか?

≪問題提起≫
1.ロシアはなぜウクライナに侵攻したか?
ソ連崩壊後、ロシアは西側の支援を期待ほどには得られず、急激な体制転換で失敗し、資源依存・秘密警察監視の規模縮小国家となった。これに対して米国・西欧は資源価格を下落させてロシアを経済的に揺さぶり、NATOを積極的に東へ拡大して軍事的に追い詰めた。
ウクライナは、ロシアと大変近い民族であったが、ロシアに組み込まれて以来、強権的支配への不満から独立の意思を長く持ち続けていた。ソ連崩壊後やっと独立したが、ロシアとは微妙な関係に止まっていた。ロシアにとっては、ウクライナの東部と南部は工業の中心でかつアゾフ海・黒海支配の要衝であり、西部の黒土地帯は重要な農業地帯で、西欧寄り政権の成立は絶対阻止したいものであった。
2014年ウクライナのマイダン革命で発足した西欧寄り政権に対し、ロシアはクリミアを併合した。直後にウクライナ東部2州で分離派勢力が暴力的抗議行動を起こし、これをロシアが支援して西欧側からミンスク合意を勝ち取った。ウクライナではその後民族主義的な政権に変わりミンスク合意に反した攻撃を東部に行なったため、これを口実に、ロシアは2022年2月突然にウクライナに侵攻した。こうして国連常任理事国が国連加盟国に侵攻したという国際秩序をひっくりかえす事態となった。

2.非人道的兵器禁止条約の締結、国連改革運動・非同盟運動などは、戦争危機に対しどのよ
うな有効性をもつか?
世界の諸国は戦争の惨禍を目撃して、対人地雷禁止条約、クラスター爆弾禁止条約、核兵器禁止条約などを次々と打ち出してきたが、国際秩序をまもるべき多くの国連常任理事国自身がそれらの条約を無視する事実があり、実際的効果は危ぶまれている。その結果、さらに進んで、「国連安保理」の抜本的改革、「第二次大戦における戦勝大国の談合による国連運営」の抜本的改革、という国際世論が高まりつつある。その運動の主流はかつて自らが植民地として宗主国の収奪に苦しんできたインド・インドネシア・トルコ・南アフリカなどを中心とする非同盟運動である。しかし、それらの国々の中には強権国家もあり、内戦中の国もあり、また他の大国へ経済的軍事的に依存している国もあるなど、様々な事情からなかなか一体的な運動体としてまとまらないのが悩みの種となっている。しかしながらそういった新たな国際秩序形成への運動に対しては各種の非人道的兵器禁止条約は軍事大国に対する重要な武器とはなっている。   

3.世界的な大強国となりつつある中国、大型ミサイルを発射し続ける北朝鮮、歴史認識問題を迫る韓国など、東アジアのなかで日本は自らをどう位置づけるか?
米国は自国の国内市場を世界に公開し、自国の主要産業を金融・情報・遺伝工学・宇宙という新産業に集中することにより、自国通貨を世界貿易での基軸通貨にし続けるという戦略を採ってきた。それは当然自国の従来産業従事者の没落を招き、新産業従事者の数的少なさから自活できる雇用の減少となり、国内世論の分裂が深まった結果、米国は以前のような世界への介入はできなくなった。
また、米国を凌駕しそうなまで強大化した中国は、国際情勢をにらみつつ、領土回復への強い欲求に基づいて台湾統一を準備しつつあり、一方飢餓状態の北朝鮮は政権維持のために核開発と大型ミサイルの開発に専念し、その前面に位置する韓国は米国の日韓一体型防衛体制構築の要請にもかかわらずむしろ日本に対して歴史認識問題を突きつけ続けるという状況になっている。
日本は戦後米国を後ろ盾にして、アジア太平洋侵略の後始末を各国とはあいまいなままで先送りし続けてきたが、ここにきて米国の思惑から一旦離れて独自の国際戦略をしっかり立て、改めて唯一の戦争被爆国として「核兵器禁止条約の批准」を含めて、正面から取り組まなければならなくなった。

写真:ウクライナ戦争(2022年2月キーウ近郊)

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