第三章 最大の友・信長、最強の敵・武田 〜築山殿と信康〜

1つ、ショックな話をするのをわすれてました。

家康のおくさんと子どもの話です。

おくさんは築山殿で、子どもは竹千代。
竹千代は、信長のむすめ・徳姫とけっこんした、というところまではおつたえしましたね。
そのあと、竹千代は元服(成人)し、「信康(のぶやす)」というりっぱなわか者に成長しました。

でもね、この築山殿と信康、武田家をほろぼす3年前になくなっているんです。しかも、"ある人"に殺されて。

その"ある人"というのが、


家康です。


信康と徳姫のあいだには2人の子どもがいました。
ですが、どちらも女の子なので、あととりとなる男の子がいません。
そのことを心配した築山殿は、元・武田家臣のむすめを、信康の側室(そくしつ)にむかえるんです。

(「側室」っていうのは、2番目3番目のおくさんのこと。
さいしょのおくさんだったり、正式なおくさんのことは「正室(せいしつ)」っていいます。
もうおわかりだと思うけど、この時代の武将には、おくさんが何人もいたんです。)

これに徳姫が
「何よけいなことしてくれてんだ? あん?」
とおこり、

築山殿は
「てか男の子生めよ。おん?」
とおこり返し、

信康は
「母さんの言うとおりだ」
と、徳姫の味方になりません。

キレた徳姫は、お手紙を出すんですね。パパの信長に。
すると……


信長「徳姫から手紙? なになに……
『ちょっとパパ聞いてー! 築山殿と信康だいぶヤバいんだけどー! 築山殿は武田とつながってるやつとフリンしてるし、信康は気にくわないヤツがいると、すぐ殺したりすんのー! で、2人は武田と組んで、パパや家康さんを殺そうとしてんだよー! マジこれどうなのー!?』
……おい、家康につたえろ。『築山殿と信康を殺せ』とな!!」


ということになってしまったんです(手紙の内ようは、もちろん短く現代ふうにしてます)。

家康と信長はおともだちですが、信長がかなり上の立場のかんけいです。
「主君と家臣」といっても言いすぎじゃない、力の差がありました。

こうなると、またも家康には、”選たく”がまってるんです。

築山殿と信康の命を守るため、織田家とのえんを切るか。
信長との同盟を続けるため、つまと子どもを殺すか。

2つに1つ……。

なやみになやんだ家康が選んだのは


家康「築山殿を………きれ。信康には、切腹(せっぷく)を言いわたす」


信長とのかんけいでした。
自分の家族より、徳川の家臣や領民の未来を選んだんです。


でもね、さいきんはこの話に「ちょっとまった!」が入ってるんです。

家康が信康を殺したのは
「信長に命令されたから」
じゃなく、
「家康と信康の仲が悪くなったから」
っていわれてるんですね。
だから、信康に味方する築山殿もいっしょに殺した……と。

真実はいったいどっちなんでしょう。

ただ、どちらにせよ、このとき築山殿と信康がなくなったのは本当のこと。

家康にとって、おくさんとむすこはどんな存在で、かれらを失うとき、何を思ったんでしょう。


つづく。



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本当にありがとうございます!! 先にお礼を言っときます!