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雨ニモマケズ 風ニモマケズ

ぼくは何故、宮沢賢治に惹かれるのか。
いや、日本人は何故、宮沢賢治に惹かれるのか。
その答えのひとつが、
宮沢賢治の一周忌に、岩手日報に掲載されたという
「雨ニモマケズ」という詩にあるように思う。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
ケシテ瞋(イカ)ラズ
イツモシズカニワラッテイル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萱ブキノ小屋ニイテ
東ニ病気ノコドモガアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコワガラナクテモイイトイヒ
北ニケンカヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイウモノニ
ワタシハナリタイ

ここに描かれている人物像は
戦時下では「滅私奉公」の勧め
のように受け取られて広まった
とういう見方もあるようだが、
実際に、ここに描かれているのは
日本人の理想とする
日本人の多くが好む、
いや、
多くの日本人から好まれる
人物像かと思われる。
そんな
「誰からも好まれる人」
というよりは
「誰からも嫌われない人」
になりたいと願う宮沢賢治に
多くの日本人は共感を覚えるのではないか。
そして、
「誰からも嫌われない人」の存在や佇まい
を、美しいと
日本人は美しいと思うのではないか。

「日本人は八方美人」
「日本人は自己主張が苦手」
「日本人は同調圧力に弱い」
日本人の弱点のように言われる。

とはいえ
1500年以上昔から
「和を以て貴しとなす」
と、日本人は生きてきた。
この国の名を
「大和」「大いなる和」
と呼ぶのは、
この字が選ばれたのは
偶然ではないだろう。

1500年培ってきた価値観
を持つ日本人は
たかだか、200年ほど前にできた
「自由・平等・友愛」
などの価値観を共有するのが
難しいのかもしれない。

以前も書いたが、
人の行動原理は、
「得する。損する。美しい」
の3つなのだから。

生前は無名に近く、
37歳で夭折した宮沢賢治。
しかし、その書き溜めていた遺稿が
弟(宮沢清六)などの尽力で
賢治の死去の翌年には
「宮沢賢治全集」が出版されて
国民的作家となっていき
現在でも広く愛されている。

南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコワガラナクテモイイトイヒ
この言葉に救われる者は、
ぼくだけではないと思う。



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