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ドラマ『あれからどうした』は、新たなドラマの可能性を示してくれた斬新な意欲作でした

年末に三日連続NHKで放送されたドラマ『あれからどうした』を観ました。実は第1話を観てあまりに面白かったので、これは続けて観てはもったいない!とチビチビと間隔を空けて観たのでした(笑)。

まったくどんな内容か知らないまま観たので、それがむしろ功を奏した感じでした。どんなドラマなのかを知った後に観た第2話・第3話も、展開は分かっているはずなのに「こーきたか!」「えっ、まさか…」と予想を裏切られるそのワクワク感がたまりませんでした。

人間誰しも「表と裏」の顔があり、意外と平気で小さな(時には大きな)嘘をつける生き物だと思います

第1話「虚実の社員食堂」
第2話「久保家の隠しごと」
第3話「制服を脱いだ警察官」

それぞれの話に出てくる複数の登場人物たちが、次々に代わる代わる「あれからどうした?」とお互いに尋ね合うというワンシチュエーションでドラマは進行します。

質問に対して自分の行動や起きた出来事を全員が語っていくのですが、その語っている内容の【音声】と実際の行動の【映像】がまったく違っていて、視聴者はその”食い違い”に戸惑いながらもジワジワとその世界観にハマっていくという感じです。これがなかなか斬新な切り口でした。

人間は情報の80%を視覚から得ている」と言われるように、どうしても目で見た情報の方に重きがあるので、耳から入ってくる情報がそれと大きく異なっていると少し頭が混乱してくるような不思議な感覚がありました。

「渋さ知らズオーケストラ」の、にぎやかで頭の中でついリピートしてしまうような音楽がまたその感覚を助長させる感じでしたね。

第1話は、証券会社の社員食堂でのお話。前夜居酒屋で飲んだ6人の同僚たちが、たまたま社員食堂で一緒にお昼を食べて、居酒屋で別れてからのそれぞれの出来事を語り合います。「あれからどうした?

まっすぐ家に帰ったと言っているのに実は不倫相手の家にその足で向かったとか、一人暮らしの家にまっすぐ帰っただけなのに、彼女と一緒に過ごしていたとか…。その嘘は小さなものから、ストレスのはけ口だとしてもそれはまずいでしょ!というものまでいろいろなパターンがありました。

第2話は、久保家の4人家族のお話。朝食を一緒に食べてそれぞれ仕事や学校へ出かけ、晩御飯の食卓を囲みながらその日あった出来事をそれぞれ語り合います。「あれからどうした?

息子に「営業の仕事で今日どんなことをしたのか?」と聞かれ、実は会社をリストラされてしまい就職活動をしていたのについ嘘を積み重ねてしまう父親。

なぜかその日に限って豪華な晩御飯を用意した母親は、実は宝くじが100万円当たって洋服にバッグに散在してしまったにもかかわらず、宝くじが1万円当たったから家族のためにぜいたくな晩御飯にしたと嘘をつき…。

子供たちは子供たちで秘密を抱えていて…。家族の間の小さな嘘って、我が身を振り返ってみてもいろいろありますよね。

第3話は、警察署の地域課に勤務する5人の警察官のお話。昼休憩の談話室に集まった5人は、前夜居酒屋を出た後にそれぞれ何をしていたのかを語り合います。「あれからどうした?

たまたまコンビニ前でケンカの仲裁に入ったという警察官は、実は制服ではなく普通のスーツ姿だったのでケンカを止められない上に、情けないことにあっさり突き飛ばされてしまったりでいいとこなし…。

女友だちがどうしても話したいからとバーで待ち合わせて飲んでいたという女性警察官は、実はその5人のうちの一人の男性の上司とデートをしていた…。

警察官は制服を着ていれば威圧感があるけれど、制服をひとたび脱いだら”ただの人”という考え方が根底にあって、それが”一人の人間としての警察官”をより浮かび上がらせていたというのも面白い視点でした。

3話ともに絶妙に”いいさじ加減”の芝居をされる俳優さんオンパレードだったのも、このドラマの世界観に没入できた大きな要因だったと思います。

また違ったシチュエーションの『あれからどうした』をそのうちぜひ観てみたいと思います。これはドラマの新たな可能性を示してくれた見事な意欲作でした!!

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