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生命科学分野におけるジェンダー・ダイバーシティに関する課題と今後の展望(8/10)

基調講演のためにオンラインで登壇しました。リアルタイムでzoomのウェビナー形式。登壇者とパネルディスカッション参加者が「パネリスト」扱いで、その他の方々は一般聴衆としての参加というやり方。視聴者マックスは225人くらいだったでしょうか。登録申し込みが293名と主催者が言われたので、ウェビナーの登録数と参加率の参考にしたいと思います。

渡辺美代子先生の基調講演メモ

基調講演の最初は、日本学術会議第24期副会長の渡辺美代子先生。より広い視点でSDGsのイントロから始まり、PISAのデータで日本の15歳の子どもたちの男女差が広がっていること、科学オリンピック(競争)と、研究発表会でのトップが前者には男子が、後者には女子が多いこと、OECD国際教員指導環境調査(TALIS)では、中学校の女性教員の割合に女性が少なく(OECDで最低で39%)、さらに中学校長の女性比率は極端に低い(6%)などのデータを示されました。

ちなみに、ジェンダーの話とは逸れますが、TALISのデータでは「批判的に考えることを自身を持って教えられるか?」に対する回答が日本ではたった16%ということは、今後さらに大きな問題が生じると思います。

世界では、むしろ男子の進学率が女子より悪くなる傾向の中、紹介された開成高校の校長先生のインタビューでは、男子校の存在意義として以下を紹介されていました。(YOMIURI ONLINE記事、2014.7.23)

「いまの中学、高校生が育っている環境をみますと、家庭の中では母親が関わる部分が非常に大きいように感じます。 そうなると男の子の場合は、異性である母親がその教育を担うことになります。(途中省略)主たる教育の担い手が 母親だと、どうしても男の子に対して甘くなってしまいます。
さらに、中学・高校の時期では、男子と女子とを比べると、女子の方の達が早い。男の子が共学に通った場合、家庭 では母親に甘い扱いを受け、学校では女子生徒のリーダーシップのもとで、補佐役をつとめるということになります。そ うすると本来そうしたリーダーシップをとる潜在能力を持った男の子が、経験する場がないためそれを十分発揮できなく なってしまうかもしれません。もちろん全員がリーダーシップを発揮する必要はないのですが、男子校の場合はそうした潜 在能力を持った男の子が実力を発揮することができる。いまの時代こそ男子校が求められていると思っています」

ここで言われていることは「女子校(女子大学)」の存在意義の裏返しですが、小学校からずっと共学で育った身としては、共学には共学の良さがあり、男女ともにネットワークを構築しやすいことは良かったと思います。

論文発表においては、女性の参画がある方が、とくに高引用論文では多くなっていることなどは、もっと知られても良いことですね。最後は「性差科学」、つまりジェンダーに配慮したイノベーションの推進についても触れられ、「ジェンダー平等1.0(女性と女子の問題)」から多様性に配慮した「ジェンダー平等2.0」へ、ということでまとめられました。

自分の講演についての備忘録

自分の発表分については、追ってResearchmapかリポジトリに置いておこうと思いますが、今回は気合を入れてかなり作り直しました。テンプレートにしたのは、InfograpiaのPresenter Kit Powerpointの中のEducation PowerPointです。

今回は日本学術会議第二部の関係者が多いことから、主張したこととして、生命科学分野特有の問題もあるが、理工系などに比べればまだ入り口は広いので、それらの方々がキャリアを続けられると思えるロールモデルが必要なこと、女性研究者育成支援は低コストでサステナブルであるべきこと、そしてトップのリーダーシップが重要として、本学の現状に触れました。

SCJ生命科学ダイバーシティシンポジウム200810#36

時間切れで十分お話できなかったスライドを晒しておきます。また次の機会で使おうと思います。

SCJ生命科学ダイバーシティシンポジウム200810#37

その後のパネリストの方々のお話は、看護、医学、薬学、家政学、農学と多岐にわたり、第二部は「生命科学系」といっても、問題のポイントがそれぞれ違うように感じました。

プログラム

テーマ:生命科学分野におけるジェンダー・ダイバーシティに関する課題と今後の展望

主 催:日本学術会議第二部生命科学ジェンダー・ダイバーシティー分科会
後 援:内閣府男⼥共同参画局、⽂部科学省公益社団法⼈⽇本薬学会、国⽴研究開発法⼈科学技術振興機構、⼀般社団法⼈⽇本看護系学会協議会⼀般社団法⼈⽇本医学会連合、⼀般社団法⼈⽇本農学会⽣活科学系コンソーシアム、⽣物科学学会連合⽇本⽣命科学アカデミー、⽇本農学アカデミー男⼥共同参画学協会連絡会、全国ダイバーシティネットワーク

日 時:令和2年8月10日(月・祝日) 13:00~17:30

場 所: オンライン方式(Zoom)

申込方法: 下記URLより、8月8日(土)23時までにお申し込みください。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfKOaRaDYAz0ftcMMrVBMr3twEByGzeS5Euw3t1XZumtXIDYA/viewform?vc=0&c=0&w=1
お申込いただいた方には、8月10日(月)12時30分頃に,シンポジウムにご参加いただくためのURLをお送りいたします。

プログラム:

総合司会: 大杉 立(日本学術会議第二部会員・東京農業大学客員教授)

13時00分〜13時05分
開会挨拶
平井 みどり(日本学術会議第二部副部長・兵庫県赤十字血液センター所長)

13時05分〜13時15分
来賓挨拶
松尾 泰樹(文部科学省 文部科学審議官)

基調講演
13時15分〜14時00分
「日本の未来を拓くためのダイバーシティとは」
渡辺 美代子(日本学術会議副会長・科学技術振興機構副理事)

14時00分〜14時45分
「生命科学分野におけるダイバーシティ推進〜過去・現在・未来〜」
大隅 典子(東北大学副学長(広報・共同参画担当))

休憩 14時45分〜14時55分

各分野の現状・課題とその解決に向けた取り組みの紹介
14時55分〜15時15分
「看護学系分野におけるジェンダー・ダイバーシティ ~女性は本当にマジョリティ?~」
小松 浩子(日本学術会議第二部会員・慶應義塾大学看護医療学部教授)

15時15分〜15時35分
「当院外科研修医の動向からみた、外科領域における男女共同参画とは」
花岡 裕(虎の門病院消化器外科・医長)

15時35分〜15時55分
「薬学系における働き方の現状と課題 〜リケジョと薬学男子@薬学〜」
石井 伊都子(千葉大学医学部附属病院教授・薬剤部長)

15時55分〜16時15分
「真の男女共同参画とは ー家政学分野の現状と課題からー」
小川 宣子(日本学術会議第二部会員・中部大学応用生物学部教授)

16時15分〜16時35分
「農学系分野におけるジェンダー・ダイバーシティの現状と課題」
熊谷 日登美(日本学術会議第二部会員・日本大学生物資源科学部教授)

休憩 16時35分〜16時45分

16時45分〜17時20分
パネルディスカッション
司会: 

平井 みどり(日本学術会議第二部副部長・兵庫県赤十字血液センター所長)大杉 立(日本学術会議第二部会員・東京農業大学客員教授)
パネリスト: 

小松 浩子(日本学術会議第二部会員・慶應義塾大学看護医療学部教授)
花岡 裕(虎の門病院消化器外科)
石井 伊都子(千葉大学医学部附属病院教授・薬剤部長)
小川 宣子(日本学術会議第二部会員・中部大学応用生物学部教授)
熊谷 日登美(日本学術会議第二部会員・日本大学生物資源科学部教授)

17時20分〜17時30分
まとめ・閉会の辞
名越 澄子(日本学術会議第二部会員・埼玉医科大学総合医療センター消化器・肝臓内科教授)

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