阿佐ヶ谷アメ子になりました。

電気・水道、ならびにガスの切り替え。郵便物の転送、転出届と転入届、ネットの設置、家具の組み立て、梱包・荷ほどき・梱包・荷ほどき、同棲相手との金の折半。
33歳のわたしはここ5年のうちにそんなことを4回も繰り返していて、希望も絶望もすっかり慣れた作業みたいに段ボールに詰めて2tロングのトラックで運び出していた。
金の折半は正確にいうと2回だが、詳細は本筋から逸れるので割愛させていただく。

「引っ越し貧乏」なんて言葉があるが、まさにそれだ。
東京。なかでも23区で暮らしていくには、あまりにも金がかかりすぎる。あたりまえだが、引っ越しに掛かる負担もそれに比例する。
引っ越しの初期費用はおおよそ家賃の4,5ヵ月分という目安を聞く。×4、とまではさすがにいかないが、それにしても5年で4回て。4回てよ。
そんな短いスパンで、結果かたちとして残らなかったものに都度大金を払いつづけてきたのかと思うと、失ったものの大きさにゾッとする。

5年前をさかのぼると祖師谷大蔵のワンルームに暮らしていた。そこから浜田山、次いで高井戸、次いで笹塚、そして1週間前、阿佐ヶ谷に引っ越してきた。
住所なんてもう言っちゃうスタイル。構いやしない。考えてみたら阿佐ヶ谷姉妹くらい知名度のある人たちが阿佐ヶ谷に住んでいることを全国的に公言していて、わたしが言えない筈がない。だからといってIPなんとかから特定しますたww凸しますみたいなやつだけは本当にご勘弁ください、仕組みは良く分からんけど。とにもかくにも、わたしは今度こそ心静かに暮らしたい。

中央線に住んでみたかった。それもとりわけ、中野から吉祥寺までのスター名鑑みたいな街のどこかに。
上京してから10年越しのやってみたかったことを叶えられたことは、こんな暮らしにおいても大いなる希望の歩みだ。
じゃあ今までも住めばよかったじゃんって話だけど、中央線てば、明日をも知れない俺たちが毎日ガソリンみたいな酒かっくらいながら今日も調子っぱずれのギター鳴らしてますみたいな顔しながら、そんなアイコン全くものともしないくらい普通に家賃が高い。(金の話ばかりせざるを得ない状況が憎い!)
その点、わたしが住んできた京王線・京王井の頭線界隈は、新宿への距離は中央線と同じ、さらに渋谷にもアクセスしやすい利点をもちながら、中央線よりも現実的な暮らしが迎え入れてくれる優良ライン。だからずっとPASMOを体に埋め込みながらピンクのロボと共に生活してきたけど、やはりオノボリズなるもの、一度は中央線のシーンに身を置いてみたい気持ちを捨て切れず。で、どうすんのよ。それなら、いかしてもらいますわってタイミングが今だった。

2021年2月1日現在、新型コロナウイルスが世界的な流行を…ってワードをまるでCMソングのようにスラスラ唱えられてしまう嫌な世の中だ。二人から一人になって、会社にも行かなくなって、緊急事態宣言も延びたりして、ホント誰にも会えないマ~~~~~ジで冴えな過ぎる日々だけど、目と鼻の先に、カルチャーひしめき合う商店街の店々。さらにお隣は魔窟・高円寺。掘っても掘ってもきりがない、真昼の散歩中の想像だけで胸躍る街に来られたのは、大正解であった。

今日、じつは勢いですこし行動にでてみたのだ。
家にいすぎて気が滅入る&新しい街で人と話したい&体を動かしたい…などの気持ちが爆発して、普通に会社員をしているが、この街の愉快な人らがにぎわう店の求人に応募してしまった。
会社の副業の規定とかは知らん。おそらくよくはないけど、このままサムズダウンを掲げて孤独の溶鉱炉に溶けて沈んでいくよりは、1000倍ポジティブな選択だと思えた。
街、そして人に馴染むには、その中の人として働いてしまうのが一番いい気がする。虎穴に入らずんばなんとやら。
ずんばのリズムを知ってるかい?ヘーイ!ホホホーイ!ホホホーイ!ホホホーイ!ホーイ!

急に視界が広がった気がして、今日はずっと仕事が手につかずワクワクしていた。
社会人としてはどうかと思うが、たまにギンギンに冴えわたる衝動的な直感に身を任せる自分の姿は、わたしがわたしを気に入ってるところだ。

久々に自分マンガの次週連載が気になってきた。
阿佐ヶ谷ホホホイ編。これで面接落ちたら意味ねーってかんじだけど。それはそれでウケるからヨシ!


☆意気揚々と面接に向かうアメ子、そこには阿佐ヶ谷の洗礼が―――!!!!

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