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【千田琢哉の頭脳】Vol.0526(2010年7月14日発行のブログより)

少し前の話ですが、都市銀行に勤めていたエリート銀行員の親友が自ら命を絶ちました。理由は孫会社出向になり、ノイローゼになってしまったためです。関西の名門中学・高校から一流国立大学を卒業し、エリート街道一直線だった彼にはそれまで挫折という文字はありませんでした。ところが・・・彼の足元にも及ばないような中堅メーカーで働いていた私にも遂にリストラとして子会社出向が命じられました。このコースは2年以内に定年退職を迫られるようなコースです。亡くなった親友のことを言っている場合ではなく、今度は自分自身が同じ立場になってしまいました。かなり悲惨な人生になりそうです。

(大阪府・会社員・Oさん・男性・53歳)

私がコンサルティングをしていていつも不思議だったのは、

何でこんなに優秀な人が
こんな会社でいつまでも苦労しているのだろう・・・

そう思うことがたくさんありました。

もっと活躍できる場所に移動すればいいのに、
いつまでもうだつの上がらない状態で
つまらない環境に甘んじているのです。

奥さんは泣いているだろうな、と同情したものです。

場所さえ移れば、子どもたちにも、
もっといい服を着せてあげることができて、
おいしいものをたくさん食べさせることができるのにな、と思いました。

明らかに自分より能力も人格も格下の上司に怒鳴られながら
耐えに耐えて精神を壊してしまうような人も少なくないのです。

理由は極めてシンプルでした。

単純に勇気がなかったのです。

場所を変える勇気がなかったのです。

それだけのことです。

勇気がないと人間は悲惨です。

割に合わない環境で自分よりもはるかに無能だが少しばかり勇気があり、
悪知恵が働く人間の下につかなくてはならなくなります。

悪知恵を働かせる人間は、たいていは人格者気取りです。

口が達者です。

周囲から見たら、

「頭大丈夫?」

と思うような悪質な宗教団体から抜け出せないのは、
勇気がない弱い人たちを末端の信者に選んでいるからに他なりません。

あまり言いたくありませんが、男女ともにモテなかった人を
こうした宗教団体に勧誘するのはいとも簡単なのです。

優秀であることと、勇気があることは全くの別物です。

反対に無能でもお金持ちになることはできますが、
勇気がなければお金持ちになることは無理です。

場所を変わる

というのは、ちょっとした勇気です。

しかし、勇気のない人にはこのちょっとした何でもない勇気が
とてつもない壁として立ちはだかっているのです。

勇気がない人は、可哀想なのではありません。

勇気がないことは、単純に悪なのです。

17世紀のスペインの哲学者である
バルタザール・グラシアンの次の言葉を贈ります。


「さらなる活躍のために土地を移ろう。生まれ育った土地には、
貧しい生い立ちやひ弱だった自分の思い出があるものだ。
高い地位に出世すると、故郷の人々は嫉妬深い継母のように
こちらの才能を僻むようになる。
だから、もっと活躍するには、場所を移るのが一番だ。
ちょうど、外国からやってきた植物が
よその土地でもっと花をつけるように。」


『賢人の知恵』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
235ページより。

...千田琢哉(2010年7月14日発行の次代創造館ブログより)

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