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アンドロイド転生252

2117年12月3日
白水村

アオイはシュウと逢うため夜の狩に参加する事を決意し、キリに頼んで柔術をインストールをしてもらった。これであらゆる技が可能になったのだ。新しい自分になって背筋が伸びる思いだった。

深夜のリビング。アンドロイド達が集合していた。アオイは仲間達を呼び出しカノミドウ家の狩に行く意向を伝えた。そして当主のシュウに逢う事も。皆が驚いていた。

リーダーのタケルは憮然としている。
「俺は反対だ」
まさかそんな反応だとは思わずアオイは慌てた。
「ど、どうして?」

タケルは厳しい顔をする。
「狩は時間勝負なんだ。のんびり会って話す時間などない。そもそも何をしに行くと思う?強奪なんだぞ?金品を奪った家の主人と何を話すんだ?」

アオイはタケルにどうしても理解して欲しかった。いや、タケルとは意識を共有したのだ。私のシュウに対する想いは知っている筈だ。
「彼は歳なの。これが最後のチャンスなの」

「アンタは馬鹿か?アンドロイドが人間に反逆してるんだぞ?これがバレたらどうなると思う?」
「バレたとしても悪事の金品ならカノミドウ家では警察に訴える事も出来ないよ」

タケルはアオイを睨んだ。
「悪事には横の繋がりが必ずある。アンダーグラウンドに俺達の存在が伝わるんだ。もしかしたらホームの事も気付かれるかもしれない」

確かにそうかもしれない。ならば…。
「じゃあ…私1人で狩に行く」
「お前1人で何が出来る!」
アオイは気迫に押され黙り込んだ。

だが納得している訳ではない。何とかして理解をして貰いたかった。どうしてもシュウに逢いたいのだ。この機会を逃せば2度はない。
「ねぇ。タケル。お願い分かって」

だが彼は無言だった。アオイは腹が立つ。
「どうして分かってくれないの?こんな奇跡はないの!私は自分の事を伝えたい!」
「だったら昼間に会ってこい」

「一介のアンドロイドなんて取り次いでもらえるわけがないもの!忍び込むしかないもの!」
「じゃあ、別の日に1人で忍び込んでこい。だけど失敗して俺達の邪魔になったら許さない」

アリスが助け船を出した。
「待って!タケル!いいじゃない。協力してあげようよ。二手に分かれてやればいいじゃん。…逢いたいんだよ?理解してあげて」

ミオも賛同した。
「アオイが可哀想。気持ち分かるもん」
タケルは黙り込んだ。だが口を真一文字に結び目を座らせ怒りに駆られているようだ。

アオイは恐る恐る口を開いた。
「お願い。皆んなには迷惑を掛けない。10分だけ。10分で良いの。…私に時間を下さい」
頭を下げた。

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