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アンドロイド転生746

2118年5月18日

(ルークの視点)

ミオに4度目のウィルスが落ち、解凍し発動されてから3日が経った。イヴ達は彼女のメモリ内のウィルスプログラムを探索をしたがやはり巧妙に隠されており発見出来なかった。

またもやミオは警告音に苦しむ事になった。アンドロイドにとってその音はメモリを蝕むものだった。身体を正常に保つプログラムを阻害するのだ。ミオは疲弊し徐々に異常を来してきた。

前回と同様に短期記憶を失い喜怒哀楽の表現がうまく出来なくなった。たまに正気に戻ると、音を止めてくれと誰彼構わず訴えた。また同じ事が起きたと子供達は怯えた。

ルークが彼女を自室に連れて行くと、あなたは誰だと言って恐れて泣く事もあった。そんなミオの苦しむ姿に耐えられずシャットダウン勧めるとミオはそれは嫌だと拒否するのだ。

ルークはリペア室にやって来てイヴに縋った。 
「頼む。助けてくれ。シャットダウンは怖いと言って言う事を聞いてくれない。だがスリープモードでは苦しむだけだ。どうすれば良い?」

そう。スリープモードにしていても省電力でミオの内部は動いており、警告音の責苦は続く。だから前回は彼女の意に反して電源を落とした。無になる事がミオにとって恐怖だとしても。

イヴは当然と言わんばかりの顔をした。
『機能停止すれば恐怖する事もないでしょう』
ルークの顔が強張った。それの意味している事は…つまり…死だ。

ルークはイヴを睨んだ。
「ミオを見捨てろと言うのか?イヴはそれを望むのか?それが良いとでも?」
『残念ですが、それが適切な判断です』


(キリの視点)

キリはリョウと目を見合わせた。暗黙の了解で互いに理解した。それ以外の道はないのだと。ルークの握り締めた拳がブルブルと震え出した。怒りを堪えているように見える。

キリは立ち上がりルークに近付いた。そっと彼の腕に触れると労わるように見つめてゆっくりと頷いた。ああ。私はルークにミオとの永遠の別れを決断させようとしている。

2人は元は人間の余興の為の存在だった。それに嫌気がさして彼らは逃亡した。だがホームが救った。初めて平和と平穏を知ったのだ。そして愛も。これからもっと幸せになる筈だった。

アンドロイドでありながらも2人は自意識が芽生え、お互いを労わって生きてきた。人間のように死が2人を分つまでなんてあり得なかった。それなのにそれを決断しろと言わなくてはならないのか。

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