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アンドロイド転生257

白水村 広場にて

転がったアオイにエリカが殴りかかってきた。そのエリカの両手首をアオイは握った。仰向けで受け止めている。腕がブルブルと震えた。エリカは憤怒した。2人の視線が交差する。その目が怖かった。

「お!アオイ!やるじゃん!頑張れ!」
トワが楽しそうに声援を送った。アオイは震えながら腕を伸ばした。エリカの腕がギリギリと持ち上がる。エリカは憎々しげにアオイを睨む。

アオイは右脚で膝蹴りをして馬乗りになっているエリカを払い除けて間髪を入れずに立ち上がった。エリカも身体を捩って、倒れる事なく振り向いた。だが一瞬だけアオイの方が早かった。

何も考えていなかった。アオイの脚が動き、背を向けているエリカの尻を蹴った。エリカは激しく転倒した。トワが歓声を上げた。
「お!アオイ!やった!」

や、やった!初めて一本取った…!アオイは自分の勝利に茫然となった。だが喜びを実感する前にエリカからの猛反撃で全く太刀打ちが出来ず倒された。後ろ手に羽交締めにされる。

「次!アリス!」
ええ?まだ続くの?これってイジメじゃないの?アオイは呆れた。それでもアリスが対戦相手でホッとする。彼女の動きには優しさがあるのだ。

キリがやって来た。
「まだやってるの?いくら何でも可哀想じゃん!」
タケルは呑気な顔をした。
「アンドロイドは疲れない。こんなの何でもない。三本取るまで終わらないんだ」

キリはタケルを横目で見た。
「何本取ったの?」
「一本。エリカの尻を蹴った」
キリは豪快に笑った。
「アオイ!頑張れ」

2時間後、アリスとミオから二本取って訓練は終わった。アオイは自室に行くとベッドに倒れ込んだ。疲れを知らないマシンの身体の筈なのに限界だった。メモリが熱を持ってなかなか冷えない。冷却装置がずっとフル回転だった。

サツキがオロオロとしていた
「大丈夫ですか?何か必要な事はありますか?」
彼女はナニーの仕事を休んで5時間付き合ってくれた。有り難かった。
「傍にいてくれるだけでいいの」

その後、毎日訓練は続いた。シュウの邸宅に強奪する日の当日まで、練習に明け暮れた。アオイはメキメキと上達し皆と対等に闘えるようになった。最初はスパルタだと思ってタケルを恨んだけれど結果的には良かったのだ。

そして12月30日。強奪の夜を迎えた。アオイ、チアキ、ケイはシュウの元へ。トワ、ルーク、タケルはダイヤモンド20点を奪うのだ。6人は全身黒塗りの様相で身支度を整えて深夜、ホームを後にした。

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