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アンドロイド転生145

渓谷にて

チアキと呼ばれた若い女性が輪の中から歩み出てタケルに向かってニッコリと微笑んだ。チアキは空を見上げると右手の掌を上に向けた。小型のドローンが降りてきて彼女の手に収まった。

「私もアンドロイドなの。あなたが逃げてるのはこのドローンでサーチしてて分かった。だから魚釣りをやめて先回りして待ってたの。運が良かったね。心配しないで。首を出して」   

タケルは呆然となった。こんな砕けた口調で喋るアンドロイドなんて見た事がなかった。まるで人間のようだ。アンドロイドには服従性と共に丁寧な言葉遣いが求められるのだ。

近くで見るとチアキの瞳は茶とブルーのオッドアイだった。これはまた初めて見たぞとタケルは驚いた。アンドロイドにはこのようなタイプなどいないのだ。チアキは微笑む。魅力的だった。

心配ないと言うもののタケルは躊躇した。彼らが敵なのか味方なのか判断がつかない。だがアンドロイドは嘘をつかない。タケルはチアキを見つめた。「何をするんですか?」

「まず、警告音を止めてあげる。その後はあなたの内部にあるGPSを破壊する。ラボから追手が来たら困るでしょ?さぁ、早く。時間がない。後ろを向いて頸を出して」

こうなったら信じてみよう。とにかく警告音を止めて欲しい。チアキはタケルの頸に無線ケーブルを差した。すぐに眉間に皺を寄せた。
「あー!この音は久し振り。嫌よねぇ。大丈夫だからね。信じて」

笑うとタケルのCPUのプログラムを探った。他人に…いや同じマシンに内部を精査されるなんて変な気分だった。チアキの手がタケルの脳内に指を這わせているようだった。直ぐに警告音が止まった。

不快な音が消えて安堵する。          「有難うございます」             「じゃあ、GPSを破壊する」          チアキが微笑むと同時にタケルは強制的にシャットダウンされた。彼はそのまま崩れるように倒れた。

タケルのすぐ間際まで追い付いていた守衛アンドロイドはタケルのGPSが途絶えると立ち止まり、職員にコールした。               「M1-305Qが消え失せました」        「…分かった。戻ってこい」

職員は溜息をついた。数年に1体程度、こうやってアンドロイドの行方が分からなくなる。数日後、解体された状態で発見される。まぁいいか。どうせまた同じ事が起きるだろう。

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