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アンドロイド転生272
2117年12月31日夜明け
都内某所の路上
東の空が白んできた。アオイは1人で住宅街を歩いていた。規則正しいテンポで進む。約25時間でホームに辿り着くと計算していた。底冷えする寒さでも苦がない。アンドロイドの身体は強靭だ。
彼女の前に大型バイクが停まった。タケルだった。アオイに内臓のGPSで居場所を突き止めたのだ。アオイは目を丸くした。迎えに来てくれたのか?まさか!許してくれたのか?
「乗れ」
アオイが躊躇しているとタケルは射るような視線を向けた。
「ターゲットの家に戻る。ダイヤを返す。夜にまた忍び込む。日中は…どうするかな」
アオイは眉根を寄せた。
「か、返すの?どうして?」
「家人に顔が知られたんだ。お前の馬鹿面がな。ホームに危険が迫ったら困る。返すしかない」
アオイは慌てた。
「シュウは黙っているって約束したよ」
「もう1人いただろ。アイツがすんなりと納得するとは思えない」
確かにトウマの憤りは大きかった。
アオイは上目遣いになる。
「で、でも…それで良いの…?」
「良いわけないだろう!なんて勝手な事をしたんだ?お前のせいで今回の利益はなしだ」
トウマが居たことは大いなる誤算だった。だがアオイがトウマに知られたのは一概に彼女のせいではない。今回の狩の失敗をアオイ1人に背負わせるのは責が重過ぎる。
だがチームの結束を乱した事は罪に値する。タケルは険しい顔をした。
「シュウシュウっていい加減にしろ。いいか?お前は死んだんだ。奴とはもう終わったんだぞ」
アオイは俯いた。
「はい…ごめんなさい…」
「夜にダイヤを返す。シュウに会うのは許さない。分かったな?」
またシュウの家に行く…!ああ。逢いたい…!
「分かったな⁈」
「はい…」
アオイは頷くしかなかった。
タケルはバイクの後部座席に首を向けた。
「乗れ」
「あ、あの…。私は…追放?」
「ああ。俺が村長だったらお前なんて叩き出してやる。キリ達は帰って来いだとよ」
アオイは目を見開く。
「ほ、ホントに?」
タケルは口調を少し和らげた。
「早く乗れ。馬鹿女」
「はい…」
後部座席に乗ると、タケルの腰におずおずと手を回す。緊張していた。彼は苦手なのだ。どう接して良いか分からない。エリカに遠慮して普段からなるべく関わらないようにしていた。それが親しくなる機会を失っていた。
「しっかり掴まんねえと、振り落とす」
「は、はい…!」
バイクは走り出した。
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