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アンドロイド転生27

回想 2013年10月

「お次の方どうぞ」
アオイは顔を上げた。目の前にはシュウと彼の友人達。微笑みかけられてアオイは緊張した。エプロン姿に頭にはキャップ。似合っているだろうか。

シュウが代表して注文する。
「チョコバナナ2つとイチゴチョコ2つ下さい」
「はい。1600円です」
アオイのクラスメイトが金を受け取った。

アオイはクレープを焼き始めた。手元に視線を感じて頬が強張る。何とか作り終えて4人に渡す。アオイはシュウに早口で囁いた。
「後で行くね。お化け屋敷」

「うん。待ってる」
シュウ達はクレープを頬張り、旨いと目を細めた。アオイはホッとする。良かった。こっそりバナナと苺とクリームを多めにした甲斐があった。

「シュウ先輩達に褒められた!」
クラスメイトが口々に囁いた後、並んでいる客達を捌き始めた。アオイの初めての文化祭。2つ歳上のシュウは今年で最後である。

最近のシュウは背が伸びて声も太くなり何だかすっかり大人だ。下級生にも人気がある。でも、私の幼馴染ということは公認で、付き合っていると思っている子も少なくない。

子供の時はシュウのお嫁さんになると宣言したけれど成長と共にそんな話題に触れる事がなくなった。シュウはどう思っているんだろう?そんな約束は忘れちゃったかな。

ねぇ?私のこと好き?たったそれだけなんだけど、口に出せない。だってもしビックリされたり、好きだけどそれは妹みたいだなんて言われたらモヤモヤしてしまう。気まずくなっちゃう…。

「アオイ、休憩取って良いって。シュウ先輩のとこ行こ。お化け屋敷入ろう!」
「わかった」
3人はエプロンを取った。

シュウの教室に近づくとキャーキャーと悲鳴が響いてきた。室内に入るとシュウがスーツに手袋を着けてマントを羽織り立っていた。胸が高鳴る。そんな姿もイケてる。

シュウがニコリと笑うと牙が出た。ドラキュラ伯爵のつもりなのだ。チケットを渡すと執事の様に深々とお辞儀をした。アオイはクラスメイトと顔を見合わせて笑った。少しの事でも楽しい年頃だ。

シュウが耳打ちした。
「今度、本物のお化け屋敷に行こう」
え?それってデート?
「泣いたって知らないからね」

ドキドキして思わず憎まれ口を叩いてしまう。最近のアオイはシュウの事を考えると胸が苦しくなるのだ。この気持ちは何…?それが恋だと分かるには2人はあまりに身近過ぎて気が付かなかった。

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