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アンドロイド転生95

2105年10月
アオイの自室

「そうだ!ヒナノが生きているって言ってた!」
アオイの口から衝いて出た。ベッドに横になっていたが勢い良く起き上がった。アオイの子供の頃からの親友。ジングウジヒナノ。

早速webを検索をしてみる。彼女の名前でヒットしたのは医学論文だった。医師になったヒナノの事だから間違いないだろう。アルツハイマーについてだった。近年は完治する病になっている。

彼女についてもっと情報を得たい。するとエッセイの著作があった。今から40年程前のもので近影として上半身の立体画像もあった。間違いない。ヒナノだ。嬉しくて胸が一杯になる。

アオイの最後の記憶の24歳の彼女は70歳近くになっていた。年月を感じさせるものの若々しい。その瞳は煌めいていた。どうして生きていたの?何故震災の被害に遭わなかったの?エッセイを探った。

30歳の時にカナダに臨床研修に行き3年後、現地の人と結婚した。一男一女に恵まれた。だが離婚し日本に戻ってきて東京都目黒区に住んでいた。だがそれから40年は経っている。

今も目黒区に住んでいるのだろうか。役所のデータベースで調べることが出来る。平和な日本は個人情報を公にしていた。アクセスすると同じ目黒区だったが老人施設に入所していた。

現在107歳である。会いたい…!私の存在を分かってもらいたい。モネのお昼寝は2時間。その間に老人ホームに行って帰ってくる。出来そうだ。よし!明日早速訪ねてみよう。

翌日。予定通りモネの昼寝の時間に家を抜け出した。アオイは車から降り立った。老人ホームのエントランスを見上げる。巨大なドーム型の白い建物。陽光に照らされ眩しかった。

ロビーを抜け、扉がスライドすると陽の光が暖かな広いリビングだった。老人と介護アンドロイドが多くいた。ヒナノはどこ…?アオイの高性能の瞳が老人の顔を一人一人捉える。

すると老婦人に目が止まった。テーブルに着いている。短い銀髪が涼やかだ。107歳とは思えないほど若々しい。その姿は陽光に照らされ、穏やかな時間が流れているようだった。

彼女は電子ノートをテーブルに置き、空中に投影される画像と文字を目で追っていた。その瞳は知性に煌めいていた。ヒナノ…!間違いない!アオイの胸はときめいた。ゆっくりと近付いて行った。

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