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アンドロイド転生921

2118年12月1日 午後3時
ロンドン:ドウガミリョウの住まい

外は厚い雲に覆われており薄暗い。なんと間もなく日没だ。イギリスは陽が落ちるのが早い。しかも今は雨季で日本とは反対のシーズンが梅雨なのだ。世界は広いのだなとリョウは実感する。

リョウはベッドに横になっていた。重ねた手に後頭部を乗せて天井を見つめている。月末にはもうクリスマスかと思う。そして年越しだ。まさかよその国で新年を迎えるとは…と驚くばかり。

イギリスにやって来たのが7月1日。今日で5ヶ月だ。あっという間だったなと思う。エマの家に最初に訪れたのがついこの間の事のようだ。エマは怒っていて100日間、家に謝罪に来いと言った。

そして100日目の10月10日の深夜。エマの家に訪れてお百度参りを完遂させた。エマから74日目で来なくて良いと言われたが、自分で誓ったのだ。だから残りの日数を守った。

いつも執事のセバスチャンは窓から見ていた。その度に唇に人差し指を当てて内緒にしろとアピールしたのになんと最終日にはエマが追いかけて来た。セバスチャンが報告したのだろう。

抱き付かれて息が止まりそうになった。女性と密着するなんて人生で2回目だ。エマといい、ミアといい、嬉しい時は抱きつくものなのかと驚いた。でも少し嬉しかった。

あ!いや!違う。3回目だ。アオイが最初だった。ウィルスに侵されたミオを救う為のアイデアが功を奏した時に抱き付かれた。皆んな凄いな。女の人って積極的なんだな。

エマは輝くばかりの笑顔を向けてくれた。それは本当に嬉しかった。エマは立ち直ったのだ。元気になったと言ってくれた。本当に祈祷師になってエマを救ったような気持ちになった。

いや。自分だって救われた。エリカに脅されて従うしかなかった弱い自分だった。そもそも…あの時は…片想いだからといってサキの入浴シーンを盗撮してしまった事が馬鹿なのだ。

本当に俺は最低の野郎だった。そんな自分をエマは許してくれたのだ。有り難かった。感謝していた。もう2度と人を陥れたり、恥ずかしい行いをしないと誓うぞ。

エマとの100日間の約束を果たしたのだから、大手を振って帰国すれば良いのにまだイギリスに残っている。だってこの国は楽しい。いや…ミアという友達がいるからだ。

そうそう。ミアに誘われて行ったハロウィンパーティは楽しかったなぁ。熊の被り物をミアに勧められた。35にもなってそんな格好をして街を歩くなんて思いもしなかった。

でも行って良かった。街全体がお祭り騒ぎだった。ホームの60人だけの祭りとは規模が違う。当然だ。世界って凄いな。俺はイギリスに来て本当に色んな事を知ったな。

さて…この先はどうしようか。日本に戻ってタウンで暮らして何かやり甲斐を見つけるか…。それともホームに戻って前と同じ暮らしをするか…。いや…イギリスで何かやるか…。

エマは言った。俺のコンピュータスキルを人の役に立つことに使えと。まさしくそうだと思う。せっかくの技術を人を貶める為に使ってはいけない。だけど…何をしよう…。

リングがコールした。ミアだ。応答すると立体画像が宙に浮いた。笑顔でいっぱいだ。
「ねぇ!プールに行こう!」
リョウは承諾して起き上がった。


※アオイが抱きついたシーンです

※ミアが抱きついたシーンです

※エマが抱きついたシーンです


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