アンドロイド転生197
エリカとアリスの部屋
エリカはベッドに座って一点を見つめていた。同室のアリスが就寝着に着替え始めた。アンドロイドもスリープ機能で休むのだ。エリカは呟く。
「私…アオイが来たのが嬉しくない」
アリスは手を止めた。
「仲間が増えたのに…どうして?」
「仲間?違う。アオイはアンドロイドじゃないもの。心は人間だもの。私達とは違う」
アリスは首を傾けた。
「じゃあ、タケルはどうなの?」
エリカは激しく首を振った。
「タケルは!タケルは仲間なの…!」
アリスは暫く黙っていたが囁いた。
「あなたはタケルが好き。アオイが邪魔なのね?」
精神科ナースだった彼女はエリカ心の機微を理解した。しかも1番の親友だ。
「邪魔かどうか分からないけれど…タケルと人間同士だと思うと嫌なの。きっと…2人は繋がる」
アリスはエリカの横に腰掛けて手を握った。
「大丈夫だよ」
エリカはアリスを横目で見た。
「リツが人間と繋がるかもって心配をするでしょ?」
リツとはアリスの恋人で人間だ。アリスは言葉に詰まった。2人は握り締めた手を見た。
エリカは眉根を寄せた。
「人間の心は虚いやすいの。そうでしょ?人間はね?嫌いって言いながら心は惹かれるの。好きって言いながら心は彷徨うの。違う?」
アリスは彼女の精神の理解度の深さに感嘆した。
アリスは思いついたように顔を上げた。
「大丈夫だよ!アオイは愛してる人がいる。シュウって人間がいた。その想いは強かったよ」
エリカも思い出した。時を経て奇跡的に巡り合った2人だった。
エリカは暫く黙っていたが口を開いた。
「…本当に大丈夫だと思う?」
「大丈夫だよ」
リツも大丈夫。心は私にある。アリスは自分に言い聞かせた。
エリカは声のトーンを上げた。
「あ!明日、アオイのネックレスを探しに行くよ。タケルが行くから私も行く」
「タケルの傍にはいつもあなたがいるんだもん。自信を持って」
アリスは握り締めた手に力を込めた。
エリカは自意識が生まれてから、タケルに好意を寄せていた。最初はアンドロイドの従属性だったが、いつしか愛に変わった。マシンの自分が他人に想いを寄せるられる事が嬉しかった。
タケルの過去を知って人間の心の深さに感動した。儚さ、危うさ、そして強さに惹かれた。もっとタケルを理解したかった。ずっと傍にいたい。自分もアリスやミオのように恋人になりたかった。
なのにアオイが来た。タケルと同じ人間の心を持っている存在。その身体はアンドロイドなのに根底が違うのだ。エリカは自分との距離を感じ慄いた。仲間だとはとても思えなかった。
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