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アンドロイド転生225

12月29日 早朝 
新宿区:平家カフェ

アオイ達を店主と妻が柔かに出迎えてくれた。
「慰霊祭はどうだった?良かったか?」
アオイはニッコリとした。
「はい。行って良かったです」

店主夫婦はアオイとタケルが転生した事を知らない。何の為の鎮魂かと思うのだが、あえて深くは尋ねはなかった。アンドロイドにも悼む心があっても良いではないか。人間を慰めたいのだろう。

店主はアオイ達に水を出した。アンドロイドは1日200mlの水分で肌に保湿が生まれる。それがより一層人間と遜色のない様を生み出していた。
「有難う御座います」

リツの母親が微笑んだ。
「そろそろリツ達が着く頃よ。さっき連絡があったの。楽しかったみたい」
彼女は息子とアンドロイドの恋に寛容だった。

間もなくリツ達とケイ達が到着した。2組のカップルは一晩を共にして新たな段階を踏んだ。誰もが幸せそうだ。だがいよいよ別れの時がやって来た。アリスは寂しそうだった。

「リツ…また来るね」
「うん」
「ネックレスを有難う。大事にするからね」
「うん」

やがて6人は車に乗り込み新宿を後にした。アリスはリツに手を振り、サキは窓からずっと都内の風景を眺めていた。
「バイバイ。東京…。またね」


白水村

ホームに到着するとアオイ達は玩具や菓子を配った。子供らは目を輝かせて飛び跳ねた。大喜びだ。キリが微笑んだ。
「どうだった?皆んな?」

アオイは満足の笑みを浮かべた。
「慰霊祭は素晴らしかった。また来年も行く」
キリもアオイ達が転生した事は知らない。不思議だと思いつつ、あえて口には出さなかった。

ミオがニコニコとアリスを見た。
「ねぇ?楽しかった?」
「見て!ネックレスを買ってもらったの!綺麗でしょ?宝物よ!」

アリスは胸元を見せた。皆が注目して喜んだ。サキが羨ましそうな顔をする。ケイが手招きをした。
「渡したいものがある」
輪を外れ、ケイとサキは2人になった。

ケイはポケットから箱を取り出した。中には細いゴールドのバングルがふたつ。
「お揃いなんだ。受け取って欲しい」
「いつ買ったの?」
「内緒」

ホテルにやって来た時にジュエリーショップに飾られていた。サキは羨ましそうに眺めていた。ケイは直ぐにネットで注文したのだ。数時間後にはホテルに届けられた。サキは眠っていた。

本当は来月のサキの誕生日に渡したかったがアリスの喜んでいる姿とサキの羨ましそうな顔を見て前倒しした。サキは走っていくと、声を上げた。
「皆んな!見て!プレゼントを貰った!」

ミオが恋人のルークを見上げた。
「いいなぁ!私も欲しい!ね?ルーク?」
「よし、今度な」
ホームは愛に溢れていた。

エリカは思いついた顔をした。
「私はね!映画を観たんだよ!主人公達がタケルと私みたいだったよ!」
「私も観たよ!2人みたいだった!」

エリカとアリスは手を取り合って喜んだ。この場にいる誰もが幸せの中にいた。タケルは感慨深い気持ちになった。毎年1人で訪れていた慰霊祭に参加人数が増えたが其々が幸福の時を過ごしたのだ。

アオイが慰霊祭に行きたいと言い出した時は正直面倒だと思った。エリカが黙っていないと懸念したし1人で静かに鎮魂したかったのだ。だが杞憂だった。終わり良ければ全て良しだ。


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