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アンドロイド転生269

深夜 カノミドウ邸

再会を果たしたアオイとシュウ。アオイは泣いた。やっとやっと念願が叶ったのだ。だがシュウは老齢で心臓が悪い。疲れたと言い出した。もう潮時だ。屋敷から去らなくてはならない。

だがアオイは思い出した。ここに訪れたもうひとつの理由を。
「シュ、シュウ…。大事な話があるの」
「何だ?」

アオイは唇を舐めた。緊張する。
「あ、あのね?今日ここに来たのはね…」
アオイはチラリとトウマを見た。トウマにも口止めせねばならない。だが彼は協力するだろうか。

「あ、あのね…ダイヤモンドを…奪ったの。20点…あなたのうちから」
トウマが寄りかかっていた壁から離れた。
「は?」

アオイは上目遣いでトウマを見た。
「かなりの大きなダイヤなの。価値は計り知れない。それでね…あなたのお父様か…お祖父様が…後ろ暗い事をして手に入れたと思うの」

トウマは怒り露わにした。
「オマエは何を言ってるんだ?そ、そんな馬鹿な事あるわけない…!」
「ホントなの」

シュウも眉間に皺を寄せた。
「アオイ。何かの間違いじゃないか?息子達がそんな事をするわけがない」
「残念だけど…事実なの」

シュウとトウマは顔を見合わせた。その表情は疑問を表している。アオイは続けた。
「仲間はそれを盗んだの。つまり…ど、泥棒って事なんだけど…お願い…。私達の事は言わないで」

トウマはアオイの目の前にやって来た。顔が憤り、腕を震わせている。
「泥棒しておいて黙ってろだと?ふざけるな!これは人間に対する反逆だ!俺は許さない!」

アオイは決心した。ホームを危険に晒せない。
「私達の事を通報すれば、カノミドウ家も傷つくのよ。清廉潔白な企業ではない事が暴かれるの。それでも良いの?」

トウマは頬を染めた。
「な、なんだと?」
これは脅しだ。アオイは自分の言葉が怖かった。私はなんて事を言っているのだろう…。

シュウが溜息をついた。
「トウマ…。黙っていよう。残念ながら息子達は疚しい事をしているようだ。タクミ達は警察に訴える事など出来ないだろう。家名に傷が付くんだ」

「父さん達が悪い事なんてする訳がない!」 
トウマはアオイの前にやって来ると肩を突いた。
「オマエは出て行け!今!直ぐに行け!」
「ご、ごめんなさい。トウマ様…」

シュウは力なく微笑んだ。
「いやぁ…今晩は驚く事だらけだ。流石にビックリして疲れたな」
「ごめんなさい…シュウちゃん…」

アオイは肩を落とし寝室から出ようとしたが振り向いてシュウを見つめた。アオイの脚が自然に動いた。両手を広げ、横になっているシュウを抱き締めた。枯れ木のような身体だった。

「逢えて良かった…。有難う。有難うね、シュウちゃん。わ、私行くね。元気でいてね」
シュウもアオイの背に腕を回した。アンドロイドの自分を抱いてくれた。

嬉しかった。ただただ嬉しかった。後ろ髪引かれる思いでシュウから離れ、トウマに頭を下げると屋敷を後にした。建物を振り返りシュウの休む窓を見た。さよならシュウちゃん…さようなら。

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