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アンドロイド転生820

2118年7月5日 夜
ロンドン:レストラン

詐欺に遭遇したリョウを2度も助けたイギリス人のミア。彼女の提案で2人はレストランにやって来た。女性と2人きりの食事なんて初めてのリョウだがワインで気持ちもほぐれてきた。

ミアが口をポッカリと開けた。
「あ。名前を聞いてなかった」
「ドウガミリョウです」
「リョウね」

リョウは目を丸くする。会ったばかりなのに食事をして敬称なしで名前を呼ぶのか。それがイギリスでは当たり前のことなのか。
「リョウは幾つなの?」

「さ、35」
「へぇ!若く見えるね。私は23」
「あ…そ、そうですか。もっと上に見えた…」
リョウには女性への気遣いなどないのだ。

だがミアはニッコリとする。
「大人に見られた方が嬉しい。ね?リョウはなんでイギリスに来たの?1人で来たの?」
「はい」

1人で来たことには応えられるが何の為に来たのかは言えない。謝罪などとは。だがミアは応えを待っているようだ。リョウは唇を舐めた。
「ひ、人と…約束して…100日間」

「100日間?」
「そ、そう。その人の家に通うんです」
「へぇー」
「う、うん…」

ミアの瞳が煌めいた。
「じゃあ100日間はイギリスにいるの?」
「正確には…あと96日間だけど」
エマの家に通ったのは今日で4日目だ。

ミアは笑った。
「じゃあ…また会おうよ。リョウはノーテンキだから危ないもん。私が守ってあげる」
「え!」

リョウはまじまじとミアを見た。知り合って間もない男とまた会うだと?ミアこそ能天気ではないか?また会う…それって…『友達』ってことか?ミアは俺の初めての友達になるのか?

リョウは自分の35年を振り返る。ホームの60人は全て血縁。家族だ。今まで友達などいた事がなかった。ミアは小首を傾げた。
「ん?会うのは嫌?」

リョウは激しく首を横に振った。とんでもない。こんな嬉しいことはない。
「あ、あのさ…き、君と…ぼ、僕は…とっとっと友達かな?そう思ってもイイのかな?」

ミアは満面の笑みを浮かべた。
「うん!友達!」
「そ、そうか…僕達は…と、友達か」
リョウは嬉しかった。

実際『友達』というものがどう言うものなのか彼はよく分かっていない。コンピュータオタクで親戚でさえ極力付き合わない。唯一の相手がキリとタカオだ。それで充分だと思っていた。

だがリョウはニンマリとなった。キリ達に報告したらビックリするだろうな。よし。後で『友達とは』で検索をしてみよう。でも何となく食事から始めるのは良いなと思っていた。

リョウはミアに対して下心などこれっぽっちもなかった。12歳も歳が離れているし、ハーフとは言え異国の人だ。自分の世界の住人ではないのだ。96日間の友達なのだ。

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