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アンドロイド転生184

ルークの部屋

ルークとミオは互いの唇を近づけた。優しく触れ合う。ミオは思う。私達、まるで恋人同士みたい。ルークの熱が自分に伝わる。幸せな気持ちになる。キスという行為が2人の絆を強くする。

ミオはタケルの過去の情景の中で恋人とキスをしたシーンを観た。タケルの恥じらいや喜び、焦り、戸惑い。そして幸福を知った。ルークを大切に想う気持ちがタケルの感情と似ていて嬉しかった。

ホームに来る前のミオは散々人々の悪意に触れて、悲しみと怒りを募らせた。だがそんな人間にミオは憧れを抱いていた。特にタケルの過去を観る度にその幸せを体感して喜びに震える。

タケルの妹のミチルの成長が嬉しかった。赤子から幼児に…そして少女に。悲しいことにミチルの命は13歳で終わってしまった。続いて欲しかった。ミチルの代わりに私が成長したい。

ずっと14歳モデルは嫌なの。30歳モデルのルークに釣り合う大人の女性になりたい。キリに頼めば新しい身体を造ってくれるだろう。だがルークはそのままで良いと言う。

ミオはルークを見つめた。
「アンドロイドが成長したらおかしい?」
「おかしくないけど、ミオはその姿が1番素敵だ」
「大人になりたいの」
「どうして?」
「人間みたいに変わっていきたい…」

ルークは頷いたが眉根を寄せた。
「キリは大人の身体を造れるだろう。でもそれはミオじゃない」
「メモリをダウンロードするよ?心は私よ?」
「外見が変わったらそれはミオじゃない」

ミオはルークの気持ちも分かる。人間の成長という段階を経て変化した身体は同一だ。だが、アンドロイドは別の身体にメモリが移行するだけだ。その身体はミオではない。

ミオは詰め寄った。
「今の私に似せてもらうよ?成長した私に見えるかもよ?だったら良い?」
ルークは黙っていた。

ミオはホームの人々を思った。ここに来て6年。人間達はこの間に赤子は幼児になり子供は思春期を迎えた。成人し、結婚する者もいる。その成長が羨ましかった。人間ってなんて凄いの?

「お願い。変わりたいの」
ルークが許可してくれない限り、自分の夢は叶わない。強行突破で変化して嫌われたくはない。彼の心が変わるのをミオは待つしかなかった。

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