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アンドロイド転生36
回想 2020年10月
「企画部のヤマキさんってイケてるよね?」
「私は外商のコンドウさんの方が好き」
「ね?アオイは誰がイイ?」
「私は特にいないかなぁ」
だって私にはシュウがいるもん。それにどんな男の人がいたって彼のカッコ良さ、優しさには敵わない。アオイの自慢の人だった。付き合い出して7ヶ月。2人は順調に愛を育んでいた。
3人はランチ中だった。アオイはパスタをフォークに絡ませながら同僚の2人を眺めた。彼女達は服にも髪にも化粧にも一部の隙もなかった。其々美しく、自信に満ちていた。
アオイも社会人になりその美貌に落ち着きが加わった。商社に就いて半年。仕事にも慣れた。責任と重みも知った。働く喜びも見出した。全てが順調だった。私は大人になったと実感していた。
シュウも新社会人だった。2つ歳上なのだが彼は薬学部で6年間学び、アオイと同じ年に社会の一員となったのだ。忙しくもハリのある毎日らしく、よく瞬間が成長だと言っていた。
シュウはカノミドウ製薬のMRとして職を得たが、いずれは頂点に立つ運命である。江戸時代後期から続く由緒正しい家業のたった1人の後継者として、その肩には多くの期待と共に重圧があった。
私も一緒にその圧力を受け止めたい。一生を共に歩みたい。小父様、小母様を両親と呼びたい。シュウを夫として支えたい。アオイの願いはいつかカノミドウアオイになる事だった。
2人の交際は両家で認知され、祝福を受けていた。近隣に居住し同等の家柄。シュウの両親からは幼い頃から娘のように愛された。結婚をしても軋轢が起こることはないと言う自信があった。
16年前のあの7歳の夏祭りの夜、シュウちゃんのお嫁さんになる!とアオイは宣言した。シュウも両親達も笑顔を見せた。まるで昨日の事のようだ。それが実現する日を夢見ていた。
同僚Aの声が遠くから近くにやってきた。
「…行かない?ねぇ?アオイ、アオイってば…!」
アオイはハッとなる。
「え?あ、ごめん。ボーとしてた。何?」
同僚Bが苦笑する.
「ダメだよ、アオイは合コンには行かないよ」
そう。私は行かない。例え人数合わせでも、シュウ以外の男の人とはお酒を飲まない。
ああ、早く週末にならないかな。シュウと一緒に過ごしたい。彼の笑顔を見つめたい。
「あ〜!アオイ、なに笑ってるの〜?もう、1人でいつも幸せなんだから!」
「良いよね〜。いっつも楽しそうで!」
「うん。楽しい。2人もきっと出来るよ。ホントに好きな人が。そして愛してくれる人が。大丈夫!」
「ありがと。幸せな人は言う事が違うね!」
アオイはにっこりとした。
「幸せは分かち合うものだよね」
「はいはい。そうしましょう」
向かう所敵なしとは今のアオイに相応しかった。
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