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アンドロイド転生332

白水村:食堂

元人間だと打ち明けたタケル。エリカはアオイも同じだと暴露した。キリは驚く。
「え…?まさか…嘘でしょ?」
一同から注目を浴びてアオイは緊張した。

アオイは下唇を噛む。エリカ。なんて余計な事を言うの…仕方がない。輪廻転生したと打ち明けよう。信じるかどうかはキリ達に委ねよう。
「う、うん。実はそうなの…」

キリは苦笑する。
「そ、そんな事あるわけない。あり得ない」
ほら見ろ。そう簡単には信じない。自分だって転生した時は理解するのに苦労した。

タカオも驚いたように笑った。
「たまたま生まれ変わった2人が…たまたまTEラボのアンドロイドで…たまたまホームで巡り会ったのか。そんな事があるのか」

タカオは輪廻転生を認めたようだ。どうやらタカオの方が柔軟なようだ。アオイは覚悟を決めた。
「わ、私は2022年に死んだの。車に撥ねられて…。目が覚めたら80年後で…アンドロイドだった」

人間達は互いに見つめ合った。信じ難い話に言葉を失った。タケルが一同を見回した。
「俺もアオイも何で転生したのか分からない。でもそもそも人間なんてよく分からない」

タケルは苦笑する。
「ほら…。予感が当たったり、正夢が本当になったり、偶然の奇蹟にあったり…。だから魂もあって…別に宿る事だってあるんじゃないかと…。実際に体験して…まぁ、今はそう思うんだ」
 
タカオは腕を組んで納得したように頷いた。
「そうだな。生き物なんて遥か昔は単細胞だったんだ。それがこんなに進化したんだ。魂だってきっとあるな。生まれ変わる事だって」

タケルは皆を見渡した。
「俺が生まれ変わった事に意味があるとするなら、今かな?ってさ。アンドロイドの強靭な身体と人間に屈しない心があるなんて最強だろ?」

キリは慌てたように頷いた。
「そ、そうだけど…。それは凄い…頼もしいけど…私は驚き過ぎちゃったよ。ホント」
喜んでいる様にも恐れている様にも見えた。

エリカは小馬鹿にしたようにアオイを見た。
「で?アンタは戦うの?ま、無理よね。ホームの為に協力なんてしたくないヤツだから」
アオイは俯くだけだった。

エリカはアオイを睨んだ。
「ふん。おまえなんて…安全な場所で吠えてろ」
口調に憎しみが込められていた。アオイの頬が恥ずかしさで強張った。

アオイは何も言えなかった。そうだ。私は今まで夜の狩もしなかった。犯罪だと糾弾して拒否してた。なのにシュウに逢いたいが為にタケルの反対をよそに強行した。自分の都合ばかりだ。

今度はタケルの決意を否定して罪を犯すなと反対している。いや、何があっても人を殺めてはならない。そんな事をして欲しくない。だが、いつも私は安全な場所で吠えているだけ。

ああ。エリカの言う通りだ。何て小さい人間なんだろう…。アオイは自己嫌悪に陥り、頭を垂れた。サツキがアオイの肩にそっと手を置いた。その労りが嬉しくもあり、情けなかった。

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