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アンドロイド転生147

リペア室

「うちらは逃げてきたり、生きたいと思ってるアンドロイドを助けてるの。で、禁止機構を外してあげる。だって警告音が鳴るでしょ?嫌でしょ?」
キリはニコニコと楽しそうだ。

「で、皆んなで楽しく暮らす。タケルも今日から家族だよ。他にもアンドロイドはいるし、すぐに仲良くなれるよ。どう?イイと思わない?」
「家族…」

俺はここで暮らすのか?本当に?でも…まぁ…ラボから逃げたのに新しい場所があるのは悪くない。行く当てなどないのだ。それにここはアンドロイドを修理するだけの能力もありそうだ。

でもイイことづくめなんてそんなに世の中は甘くない。タケルは疑心暗鬼になった。
「で?俺は何をすればイイの?」
「お!話が早い。頭いいね!」

扉がスライドし髭を生やした男性と7、8歳位の少年が入ってきてキリの横に並んだ。
「旦那のタカオと息子のルイだよ」
タカオはタケルに握手を求めた。

タケルは驚いた。人と握手するなんて生前もアンドロイドになってからもした事がない。緊張した。でも尊重されているようで嬉しかった。手を差し出すとタカオはしっかりと握って微笑んだ。

ルイが父親の真似をして手を差し出した。
「こんちは!」
キラキラした目元はキリにそっくりだ。ルイは両目がシルバーで髪が赤かった。

「タケルだ。宜しくな」
ルイと固い握手を交わした。少年は嬉しそうだ。小さな手でガッチリと掴んで何度も振った。キリは満足そうに微笑んだ。

「タカオはバイヤー。バイヤーの説明は後でね。私は…科学者っていうか…。リペアが正しいかな。アンドロイドやらなんやらを修理、修復するのが仕事。タケルの禁止機構を取ったのも私」

キリはルイを見下ろして微笑んだ。
「で。ルイはキノコ採りの名人」
ルイは自慢げに胸を張った。
「4000種類あるけど全部覚えてるよ!」

キリは腕を組み室内をプラプラと歩いた。
「ここは人間は51人。アンドロイドは6人。人間とマシンの垣根がなくてみんな家族だよ!」
6体と言わないところが少し嬉しかった。

キリは立ち止まると真面目な顔をした。
「仲間が釣りに行ってたからタケルを見つけられたの。でもまぁ、チアキはいつもサーチしてるけどね。あとで紹介するからね」

「分かった」
「これからタケルに色々とインストールするから。イイ?悪い事にはならないから大丈夫」
キリは目を細めて口角を上げた。

「どんなにイイ事が起こるんだ?」
キリはニッコリとする。
「イイかどうかはその後に判断して。じゃあ。インストールするから振り返って」

タケルは従った。彼女を信じてみようという気になった。どうせ1度は廃棄されると覚悟したんだ。それに行く当てもない身の上だ。ここは安住の地か。悪くない。よし。とことん付き合おう。

キリはタケルの頸のソケットにUSBを挿した。こういった作業でタケルは美容師のプロになったのだ。今度はどんなプロになれるかと期待もあった。僅か1分でタケルはまた新たな技術を習得した。



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