アンドロイド転生747
白水村集落:リペア室
ミオの苦しみを救う方法はひとつだけ。彼女の電源を長押しすること。機能停止(死)となり2度と目覚める事はない。ルークは疑問に思う。本当に?残された道はそれだけか?
ルークはイヴを見つめた。
「長押しなんて出来ない。電源を落としているだけじゃダメなのか?いつか打開策が見つかるかもしれないじゃないか。頼む。助けてくれ」
イヴもルークを見返した。
『電源を落とすのは問題ありません。ですが打開策に効果があるのかどうか試験が必要になります。その都度ミオを目覚めさせる事になります』
キリは慌てた。
「そ、そうだよ。きっと何度も試験が必要になるよ。それじゃあ…ミオは苦しむ為に起きるようなものだよ。それでいいの?」
キリはルークに詰め寄った。
「ミオはシャットダウンが怖いって言ったんだよね?それに怯えながら無になったり…また起きて警告音に耐えたり…その繰り返しだよ」
ルークの顔に怒りの表情が現れた。
「まるでミオは機能停止になれば良いと言っているようだな!死ねと言うのか!」
「それが…ミオの為になるなら…!」
ルークはキリを睨んだ。
「エリカを機能停止にするのが容易いキリの言葉らしいな。やはり人間だから違うのだな。我々をコントロールしようとしている」
キリはルークの糾弾に胸が痛くなった。やはりエリカを機能停止した事を恨んでいるのだろう。そうだ。彼はエリカを擁護したのだ。何度も。それでも自分は決行したのだ。
キリは力なく俯いた。
「コントロールするつもりなんてないよ…」
「俺は嫌だ。ミオを失いたくない。マシンだって情愛があるんだ。分かってくれ」
リョウが立ち上がった。ルークを直視した。
「それこそが自分本位だ。ルークはそれで満足かもしれないがミオは苦しむだけだぞ。打開策が見つかるまで何度も。何年も」
「俺達の数年なんて大したことはない!」
「数十年かもしれないぞ?だけどな?あと130年もすればホームは終わるんだ。誰が打開策を見つけるんだ?キリも俺もとっくにいないぞ」
イヴは平然としていた。
『2人がいなくなれば、私の行く末も不明です。ミオを救えるかどうか分かりません』
ルークは黙り込んでしまった。
だがその表情には、誰に対するものなのか憎しみが溢れている。彼の心の内では嵐が吹きつけていた。辛い。憎い。悔しい。皆がミオを機能停止しろと言う。そんなに簡単に言うな。
永遠の命があるとも言われるアンドロイドなのに、たった12年を共にしただけで別れるのか。だが救う手立てが見つからない…。だから諦めるのか。俺はミオを見送るのか。
ルークは顔を上げた。彼の端正な顔には憎しみの表情は消え失せ哀しみが宿っていた。無言でリペア室から立ち去った。誰もが言葉を発せなかった。後は彼の判断に委ねるしかない。
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