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アンドロイド転生751

東京都:アオイとアリス

南麻布にいるアオイと新宿にいるアリスの元にチアキが通信して来た。其々の目の前にチアキの立体画像が浮いた。顔が沈んでいた。
『ミオが…死んだの…』

3日前にミオに4度目のウィルスが落とされた時、直ぐに村に帰ると2人は言ったがチアキはホームに戻る必要はないと告げた。もう間に合わない。タイムリミットは30分なのだ。

それでも行くと言う2人に彼女は首を横に振った。アオイはモネのサポートをし、アリスはカフェで戦力になった方が良いと判断したのだ。その方がミオも喜ぶと思った。

実はチアキの中で諦めがあった。最早打つ手立てがない事を悟っていた。ミオは何度新しい身体に乗り換えてもウィルスの呪縛からは逃れられない。警告音という責苦に苦しむのだ。

結局、時間切れとなりデリートは出来ずウィルスは解凍し発動された。その後の経過も前回と同様だった。彼女は異常を来してしまった。
『ルークが…決断したの。機能停止させたの』

アリスはポロポロと涙を零した。
「エリカの次にミオまで失うなんて…私…耐えられない…。悲しい、悲し過ぎる…」
チアキは頷く。瞳に影が刺した。

アオイは眉根を寄せた。
「機能停止じゃなくてシャットダウンにすれば良かったのに…。いつかは助かる方法が見つかったかもしれないのに…」

チアキは首を横に振った。
『方法を模索する度にミオは目覚める事になる。そしてまた無になる。その繰り返しは残酷だとキリ達は言ったんだって』

チアキはじっとアオイを見つめた。
『それにね…あの子は人間に憧れていて…アオイやタケルと繋がって…生も…死も…理解してた。多分…覚悟してたと思うよ』

アオイは胸が痛かった。ミオは私の過去を全て知った。前世の24年の軌跡を奇跡だと言って喜んだ。だが…そう…私の最期も知っている。生と死は隣り合わせだと言うことも。

チアキは力なく微笑んだ。
『明日はお葬式なの。来なくていい。あなた達はそこで…ミオを哀悼してあげて。私は近いうち新宿に行く。キヨシさんは受け入れてくれた』

キヨシとは平家カフェの店主の事だ。心優しい彼はチアキの苦しみや寂しさを理解してくれた。アリスは驚いた。
「え!チアキ、こっちで暮らすの?」

チアキの瞳が潤む。
『うん。ホームにいるのが辛いの。沢山の皆んなの想い出に包まれている…。苦しいの…』
「そうだね…。分かった。待ってる」

アオイはチアキをひたと見つめた。
「ルークは…ルークの様子は…」
『何も話さない。ずっとミオの側にいる。今はそっとしておくのが1番良い』

アオイはルークに同情した。アンドロイドだって心があるのだ。愛し、労り、慈しむ気持ちが…。人間のそれよりもずっと純粋かもしれない。アオイの瞳から知らずに涙が落ちた。

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