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アンドロイド転生503

カガミソウタの邸宅

ソウタは友人のリツに頼まれ、アンドロイドのゲンを探し出した。ゲンはミオにウィルスプログラムを仕込んでクラブ夢幻から立ち去ったのだ。早急に見つけてミオを救わねばならない。

ソウタは偶然にもゲンに追跡プログラムをインストールしていた。直ぐにゲンの居場所が分かった。銀座の高級ホテルペニンシュラだ。
「ホテル?どういう事だ?」

ソウタはゲンの内部にアクセスする。相手に気付かれる事はない。それは抜かりない。ゲンの視覚、聴覚をハッキングした。広々とした空間。白が基調。水の煌めき。反響する音。

ソウタは叫んだ。
「いた!コイツ!プールにいるのかよ!」
スミレも目を丸くする。
「イイ身分ですねぇ…!」

ゲンの見つめる先には若い女性がいた。デッキチェアに横たわっていた。起き上がると彼女は髪をかきあげた。頸が見えた。アンドロイドに設置しているソケットがない。人間だ。

ゲンは微笑んで女を見つめた。
『ヒカリさん。この後はどうしますか?』
ソウタは画像を見て頷いた。この女の名前はヒカリか。確かに光り輝く美人だ。

ヒカリの瞳が煌めいた。
『ね?うちに来ない?』  
『宜しいのですか?お邪魔ではないですか?』
ゲンの口調は丁寧で声音は優しげだ。

ソウタは眉間に皺を寄せた。
「え?え?うちに来いってどういう事?」
スミレが微笑んだ。
「ヒカリはゲンを気に入ったって事でしょう」

スミレはヒカリを指差した。
「2人は出会った。恋をした。おそらく一晩を共にして男女の関係になった。彼女もニュージェネレーションなのでしょう」

ソウタは直ぐにヒカリについて調べ上げた。ハッカーの彼には朝飯前だ。詳細が宙空に浮かんだ。
「へー。画家だって。有名らしいぞ?恵比寿に住んでいるんだってさー」

ソウタは目を見開いた。
「お?この女はジェネじゃねぇ。マジョリティだ」
マジョリティとはアンドロイドだけでなく人間の男女問わず恋愛対象という意味だ。
 
ヒカリはゲンの腕を叩いて笑顔になった。
『お邪魔だったら誘わないわよ!』
ヒカリは腕を膝に乗せ、顎も腕に乗せて前屈みになった。ゲンを上目遣いで見上げる。

ゆっくりとゲンを指差した。クルクルと指先が円を描く。ヒカリはニコニコと嬉しそうだ。
『あなたが気に入ったの。暫く一緒に住もう』
『はい。喜んで』

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