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アンドロイド転生146
茨城県白水村:リペア室
目を開くと白い天井が見えた。タケルは横になっていた。ゆっくりと起き上がった。
「おはよう」 顔を向けると女性が笑っていた。
「…ここは?」 タケルは辺りを見回した。室内は科学室のように見えた。ホログラムが立ち上がり、所狭しと機材や部品が山のようになっていた。
「茨城県と福島県の境にある山で、50人位で暮らしてるの。ホームって呼んでる。うちらは平家の落人の子孫なの。知ってる?知らなかったら検索して。説明するよりも早いから」
タケルは頷いてwebにアクセスした。
『平家の落人とは治承・寿永の乱において敗北した結果、山間部などに隠遁した平家側の敗残兵などの生き残りのこと。2110年現在、全国統一の国からの度々の要請にも応じず独自の文化を築いている集団。近親婚の為、遺伝的に偏りがある』
「平家の生き残り…」
「そう。私はキリ。アンタは?」
「タケル…」 「宜しくね」
タケルは頷いてキリを見つめた。瞳の色が茶と青だ。オッドアイだと思った。
「はい。鏡、顔を見て」 タケルは鏡を受け取った。
言われるがまま自分を映した。片目の瞳がシルバーになっていた。驚いたが瞬時に理解した。この科学室のような部屋で修理をしたのだろう。
「眼球を換えたのか」
キリはニッコリとする。
「そう。うちらと仲間になった証に目の色を変えるの。私は人間だから生まれつきだけどね」
仲間?いつ仲間になったんだ?
タケルは憮然とした。キリはタケルの気持ちを読んだように自慢げになった。
「ラボから逃げたんでしょ。行くとこなんてないよ。ここが安住の地だよ」
「安住…」
「そう。でね?私はアンドロイドの修理人で…まぁ…プロなわけ。だからアンタの中の禁止機構を取ったの。つまり…自由ってことよ?素敵でしょ?」
「オタク…何者?」 タケルは漸く自分の喋り方に気付いた。こんな口調はアンドロイドになってからした事がない。いつも慇懃に、丁寧にが基本だった。
言葉遣いが生前のようになった。これが禁止機構を取ったと言う事なのか。キリが身を乗り出す。
「うちらは天才集団だよ!」
天才…確かにそうだ。こんな技術があるとは。
キリは顔を顰めた。呆れたような顔だ。
「タウンの奴らはアホばっかり。あ、タウンって言うのは…うちら以外の人間の事ね?タケルが派遣されていた世界ね?」
タケルはキリを見つめた。40歳前後の美しい顔立ち。キラキラと瞳を輝かせる。主人だったシライシや美容院に訪れる客達もいつも楽しそうだったが、彼女は質が違うように思えた。
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