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アンドロイド転生704

白水村集落:リペア室

ミオのメモリに再度ウィルスが落とされた。イヴにも手出しが出来ないクラウドの上層階に格納されていたのだ。誰もがウィルスを作ったアンドロイドのゲンに怒りと憎しみを覚えた。

ウィルスは前回と同じ形質だが僅かに変異している。その微細な変化が手こずるのだ。だが一同は決意する。諦めてなるものか。何が何でもプログラムを削除してミオを助けるのだ。

イヴは室内の仲間を見渡した。
『カガミソウタさんに連絡をしました。私達を手伝って下さいます』
ソウタは優秀だ。彼の協力も大いなる戦力だ。

直ぐにソウタの立体画像が宙空に浮いた。神妙な顔をしている。
『皆さん。宜しくお願いします』
全員も頭を下げた。

ミオが涙ながらに呟く。
「アオイ…アオイ…来て…」
前回、アオイはミオの恐怖を柔らげる為に、自分の過去を観せた。ミオの憧れの人間の歴史だ。

アオイと繋がる事で彼女の全てをミオは知る。前世も転生してからも。その軌跡を奇跡だと言ってミオは感動するのだ。アンドロイドの自分が人間の生を体験出来る事が嬉しかった。

アオイは現在、東京にいる。元主人のタカミザワサクラコの元で娘のモネの看護中だ。モネは足首を骨折してリハビリ中だった。1ヶ月以上経っていた。完治にはあと2ヶ月は必要だろう。

イヴが頷いた。
『アオイを呼びます』
ミオはルークに抱き締められながら震えていた。
「怖い、怖いよ…」

間もなくイヴは優しく微笑んだ。
『アオイに通信をしました。元主人に暇を願うそうです。きっと来てくれるでしょう』
全員が安堵した。

イヴはミオを見つめた。
『チアキとアリスにはどうしますか?連絡をしますか?来てもらった方が心強いですか?』
2人は現在、新宿の平家カフェにいるのだ。

ミオはポロポロと涙を零して、うんうんと頷く。彼女はアンドロイドの中では幼いモデルで14歳クラスのミオは皆んなの妹分だった。彼女の意識でもずっとそうなのだ。

約2ヶ月前にアンドロイドのレイラとの戦闘で身体を損傷し25歳の身体に生まれ変わったが、どうやら生粋の妹分の心は抜けていないようだ。
「チアキ…アリスに…会いたい」

『分かりました。2人に連絡をします。さて、皆さん。デリートの作業を始めましょう。私は問題解決のアルゴリズム提示します。膨大になりますので皆さんは協力して計算して下さい』

アンドロイド達は力強く頷いた。計算は得意だ。しかも疲れを知らない。いくらでも休みなく働けるのだ。其々が定位置に着いて作業を始めた。誰もが一丸となって取り組んだ。

キリは椅子に腰掛けてコンピュータホログラムを立ち上げた。リョウとケンジを見た。
「よーし!うちらもやるよ!負けるもんか!」
2人は頷いて持ち場に着いた。


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