アンドロイド転生251
白水村集落:アオイとサツキの部屋
夜。アオイはサツキに声を掛けた。
「聞いてくれる?」
「はい。何でしょうか」
「あ、あのね…大変な事が起こったの」
サツキは訝しんでアオイを見る。
「シュウって覚えてる?私の元婚約者で私が死んだ後、別な人と結婚して家族がいる…」
「はい。トウマ様達の曽祖父様です」
アオイは神妙な顔をした。
「トウマ様の父親か、祖父か分からないけれど…。悪事を働いて…いるのか…脱税なのかも分からないけれど…夜の狩に…行くんだって…」
分からない事ばかりだが、確かなのは彼らの自宅にあるダイヤモンド20点を奪うのだ。夜の狩のターゲットになってしまった。カノミドウ家がまさか夜襲の対象になるなんて…と思う。
サツキは目を見開いた。
「まぁ!それは驚きました」
「でね?シュウ以外の家族が旅行で留守の時に実行するんだって。12月30日の真夜中」
サツキは真剣な面持ちでアオイを見つめる。
「アオイさんはどうしたいですか」
「わ、私はどうして良いか分からない…」
本当に分からなかった。
アオイはアリスの言葉を思い出す。
『アオイも一緒に行こう!シュウに逢おう。これは運命だよ?シュウはもう歳なんだよ。これが最後のチャンスだと思うよ!』
「ね?サツキさん。どうしたら良いと思う?」
「狩は間違いなく実行されるでしょう。その時がお逢い出来る最後のチャンスです。旦那様はお歳です。もう時間がありません」
そうなのだ。彼の時間は残り僅かだ。今迄シュウにアオイだと打ち明ける3度のチャンスがあったのに、叶わなかった。でも4度目の機会が生まれたのだ。今度こそは伝えたい。やっぱり伝えたい。
「私…私…やっぱりシュウに逢いたい!」
サツキは微笑んだ。
「そうです。お逢いするべきです。これこそがご縁ではありませんか」
アオイはまたアリスの言葉を思い出す。
『もし、シュウのところへ行くなら柔術をインストールしないと無理だよ。それは覚悟して』
それはそうだ。当然だ。
ホームに来てから今日まで、夜の狩は犯罪だと断言して参加しなかった。それで良いと思っていた。だが今回ばかりは違う。こんな運命の巡り合わせがあるものか。インストールでも何でもしよう。
「アオイさん。不安ならば私も一緒に行きます。アオイさんの為になるなら喜んで何でもします」
アオイは胸が熱くなった。
「有難う」
いつもいつもサツキは寄り添ってくれる。タウンにいた頃も色々と協力してくれた。今回も一緒にシュウの元へ行ってくれるなら心強いだろう。だが自分の満足の為に友を利用したくはなかった。
「私…シュウに逢ってくる。サツキさんは応援してくれればそれでいい」
「分かりました」
翌日。アオイは柔術をインストールした。
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