アンドロイド転生569
桜祭りの会場
「そうだよな。俺達は自由なんだよな!」
ルイはモネとの恋愛を大人に口出しをされたくなかった。だがカナタもヤマトも悔しそうな顔をしてルイはまだ少年なのだと諭した。
そう。ルイは15歳。親にどんなに自由を訴えたところでまだ子供であり、自立など出来ないのだ。ましてや閉鎖的な村で育ち、世間の事など全くの無知。生きる術を何も知らない。
ルイはモネを見る。恥ずかしい思いで一杯だった。自分達の付き合いを堂々と宣言出来るどころか別れたと嘘をつき、親に内緒でこっそりと会っていたのが事実だったのだ。
「ご、ごめんよ…。モネ…」
モネは俯いている。何をどう言って良いのか分からない様子だった。一同は無言になってしまった。ニナは悔しそうな顔をする。
エリカは慌てた。時間は限られているのだ。やるせない空気のままで終わらせたくなかった。
「ルイ!ほら!プレゼント!渡したら?」
ルイは思いついた顔をした。
「あ…。そうだよな。うん。後で渡そうと思ってたけど今にする。モネ。誕生日おめでとう」
小箱を差し出した。モネの瞳が輝いた。こんな状況でも嬉しかった。
礼を言って受け取ると小箱を開いた。中には薄いブルーのネックレス。感激した。
「アクアマリン!」
アクアマリンは3月生まれのモネの誕生石だ。
エリカが笑った。
「本物の石じゃないよ。ガラスだよ」
「関係ないの!そんなこと!」
モネは首を横に振り笑顔を見せた。
ルイはエリカの言っている事の意味が分からなかった。本物じゃない?これって偽物なのか?石?ガラス?そもそも本物って何?ああ。やっぱり俺は本当に色んな事を知らなさ過ぎる…。
モネは喜びで胸が一杯になった。懐かしい思い出があるのだ。母から贈られ、ナニーのサヤカに譲ったアクアマリンのネックレス。今でもサヤカの胸元で輝いているのだろうか。
まさかそのサヤカがアオイという名前になり、集落で暮らしているとは思いもしない。その事実を知ったモネは驚き喜ぶ事だろう。そしてアオイの胸元を見て歓喜するに違いない。
エリカはネックレスを手に取ると、モネの首に巻いた。ブルーのガラスは陽光に反射してキラキラと輝いた。モネの顔も輝く。価値とは本物だとか偽物だとか関係がないのだ。
「ルイ!有難う!凄く嬉しい!」
モネの笑顔に一同の心は少し明るくなった。ニナやアンが微笑む。
「凄く似合うよ!綺麗だよ」
エリカが歩き出した。
「皆んな行こう!時間がないよ。楽しもうよ」
若者達は頷いた。そうだ。クヨクヨしている時間はない。その切り替えの早さが若さなのだ。
※母親からネックレスを贈られたシーンです
※モネがアオイにネックレスを譲ったシーンです
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