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アンドロイド転生123

(別れたあとのこと)

アオイは茨城県つくば市のTEラボに到着した。エントランスに3体のアンドロイドがいて、アオイに向かって優しく微笑んだ。間もなくアオイの後から2体が車から降り立った。

人間の男性職員がやって来て電子ノートから投影されるホログラムを見た。1人ずつ名前を読み上げ、其々の運命を告げた。
「えーと。タカミザワサヤカはメンテナンス」

アオイは弾けるように顔を上げた。え?今なんと言ったの?私は廃棄ではないの?まさか?何かの間違いでは?確認しなくちゃ…!今すぐ…!
「あの、あの…!質問をしても宜しいですか?」

職員は顔を向けた。
「良いよ」
「タカミザワサヤカです。私は廃棄ではないのですか?メンテナンスですか?本当に?」

職員は再度、電子ノートを見た。
「うん。メンテ。じゃ、皆んな着いて来て」
途中で廃棄を告げられたアンドロイド2体と別れた。アオイは心臓が高鳴っていた。

まさか命が繋がるとは思わなかった。廃棄だとばかり思い込んでいた。男性職員はメンテナンスルームにやって来ると別の職員と話し始めた。
「4体はメンテ。その内のこの1体は初期化ね」

アオイを指した。どうやら自分は初期化されるらしい。初期化って…?職員はアオイ達を見渡した。
「じゃ、身に着けてるものを外して服を脱いで寝台に横になって」
アンドロイド達は従った。

アオイはネックレスを外しながら頼んだ。
「お願いします…!絶対に失くさないで下さい」
「そんな事を言うマシンなんて初めてだよ。大丈夫だよ。安心して」
彼は驚きつつ微笑んだ。

アオイはホッとして寝台に横たわった。電源が落とされると彼女は無になった。室内ではいつものようにメンテナンスの工程に進んだ。目の濁りを洗浄し、抜けた髪を増毛して皮膚に保湿を与えた。

次にCPUのクリーンアップとデフラグを行い最後に首と胴体を離脱して内部を精査した。古くなった箇所を何点か交換した。電源が入るとアオイの瞼が開いた。職員は満足そうに微笑んでいる。

全てを終えてリニューアルされ生まれ変わった気分だった。廃棄されるとばかり思い込んでいたのにまだ生きられるなんて夢のようだ。未来はあるのだ…!もしかしたら誕生石の加護かもしれない。

服を着ると職員に手招きをされた。
「はい。ネックレス。大事な物なんだね?」
「はい。宝物です…!」
アオイは首に着けて微笑み、小石に触れた。

彼は椅子を指し示した。
「じゃあ座って。初期化するから、首を出して」
彼はUSBを持っていた。アオイが椅子に腰掛けると彼女の頸のソケットに差し込もうとした。

アオイは職員を振り返った。
「質問をしても宜しいですか?」 
「良いよ」
「どうして私は廃棄ではないのしょうか?新しいモデルは出来ていなかったのですか?」

職員は微笑んだ。
「出来てるよ。だけど派遣先からアンケートを取ったら、オタクはオールAだったんだ。優秀って事だよ。そういう場合は廃棄は免除になるの」

アオイは驚いて彼を見つめた。言葉に詰まった。サクラコの評価に胸が熱くなった。…私がオールAだなんて…。泣いてばかりいたのに。信じられない…!ああ、有難うございます!サクラコ様…!

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