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アンドロイド転生959
2119年3月11日 夜
都内某所 公園にて
シオンは恋心を本人に打ち明けた。するとトウマも好きだと言い出した。初めて会った時からだと。去年の7月の終わりだ。8ヶ月間も両想いだったのかと驚いた。あまりの事に言葉が出ない。
トウマは両手を合わせて肘を両腿に置いた。身を乗り出すような形になる。ブランコを眺めた。
「俺さ…子供の時…7歳位の時…学校をサボって公園に来た。ブランコを描いて過ごした」
トウマはフッと笑う。
「ハヤトって言う同級生を好きになったんだ。でも彼女が出来て…悔しくて…仲が良いところを見たくなくてさ。その頃から男が好きだったんだ」
シオンは心底驚いていた。トウマも同じだったとは。自分も子供の頃から同性に興味があった。だが村では好きになる相手はいなかった。それがトウマを見て初めてときめいたのだ。
「中学の時…絵の教室でも好きなヤツが出来た。やっぱり男だった。でも…それじゃいけないって思ったんだ。まぁ…別に同性愛なんて珍しくはないんだけど…なんか…相手にバレたくなかった」
シオンは何度も頷いた。そうなのだ。相手に知られて嫌われたくないのだ。トウマは続けた。
「だから女の子を好きになろうと思ったけど…なかなかいなくて…」
トウマはチラリとシオンを見た。
「男も…それから好きになる相手もいなくて。で、去年ヒマリに告られた時に…ヒマリはあまり女の子っぽくないしイイかなって思った」
トウマは苦笑した。
「ヒマリってずっと喋ってるだろ。何でも決めてくれるし。食べる店も、遊びに行く場所も。だから気楽だ。俺は笑ってるだけでイイし」
シオンは疑問だった。
「でも…ヒマリさんの事は好きで…」
「うん。そう思ってた。去年のクリスマスの時まで。デートした。で…キス…したんだ」
シオンの胸がキュッと痛くなる。だよな。キスするよな。トウマは首を横に振った。
「でも…ちっとも嬉しくなかったんだ。あ。違うなって思った。でも…嫌いではない」
シオンは頷いた。トウマは続ける。
「嫌いじゃないから…今でも付き合っている。でもハッキリとさせる。このままじゃダメだ。ヒマリにも悪い。俺も正直になる」
トウマは背筋を伸ばしてシオンを見つめた。
「シオン。俺はお前が好きだ」
「ト…トウマさん…」
シオンは気が遠くなりそうだった。
トウマは口元を引き締めた。
「まず…今日はもう帰ろう。肩を冷やさないといけない。打撲してるって…さっきのアンドロイドが言ってたろ。タクシーを呼ぶよ」
直ぐにタクシーがやって来ると2人は乗り込んだ。後部座席に並んで座るとたまたま手が触れ合った。シオンは恥ずかしくなって咄嗟に手を避けた。それをトウマは掴んだ。
シオンの胸が高鳴り頬が熱くなった。ドキドキが止まらない。2人は手を繋いで無言で夜景を眺めた。15分後。家の前に到着した。降りるとトウマは心配げにシオンを見つめた。
「痛くないか?大丈夫か?」
「はい」
「ちゃんと冷やすんだぞ」
「はい」
トウマは早く行けと促した。シオンが家に入るのを見届けるとトウマはリングを起動した。配車アプリを立ち上げた。間もなく車がやって来るとホウジョウカズキの家に向かった。
※トウマの秘めた恋のエピソードです
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