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アンドロイド転生267
深夜 カノミドウ邸
アオイはシュウを見つめた。
「ねぇ?あなたは…幸せだった?」
トウマは目を剥く。なんだその口調は?腹が立つが黙って2人を見つめていた。
シュウは虚空を見上げた。
「そうだなぁ。山あり谷ありだったけれど、この歳になってみると全てがなるようになったと思う。幸せだったよ」
シュウはアオイを見つめた。
「君を失って、運命を呪った時もある。それでも時は流れていくんだ。あっという間にね。そして…悪いが…時の彼方になっていくんだ」
アオイは深く頷いて微笑んだ。
「そうね。分かる。時に埋もれるのよね。生も死も。私の事も。私はシュウちゃんが幸せだったならそれでいいの。ホントよ。心から思うよ」
シュウはアオイの瞳を見つめた。
「アオイは?幸せだったか?幸せか?」
「幸せだったよ!凄く。本当に。ずっと続くと思ってた。でも突然死ぬなんて考えもしなかった」
本当にそうだ。アオイとシュウは幼馴染で愛を育んだ。結婚の約束をしていた。3ヶ月後に花嫁になる筈だったのだ。だがアオイは暴走車に跳ねられた。死が2人を分けてしまった。
「そして…まさか、魂も続くとは思わなかった。輪廻転生するなんてね…。第二の人生は子育てをしたの。愛情の全てを注いだ。幸せだったよ。今は…幸せだよ。またあなたに逢えたのだもの」
トウマは眉根を寄せた。2人は一体何の話をしているんだ?それにしてもサヤカの親しげで生意気な口振りには驚いた。こんな口調で話すマシンは初めて見た。一体どうしたんだ?故障か?
シュウは微笑んだ。
「そうか。幸せなんだな。それなら良いんだ。でも…僕が幸せにする事が出来なくてごめんな」
アオイの口元が震えた。涙が滲んできた。
「本当に…守れなくてごめんよ」
「シュウちゃん…本当はあなたと幸せになりたかった。結婚して、子供を産んで、一緒に歳をとりたかった。こんな形になるなんて嫌だよ」
トウマは益々眉間に皺を寄せた。サヤカが泣いている。2人の話が全く理解が出来なかった。とうとう我慢がしきれず口を挟んだ。
「祖父ちゃん、何の話をしてるんだよ?」
シュウは顔を上げた。
「想い出話だよ。100年前の」
「は?」
「僕らは恋人同士だったんだ」
アオイはトウマを振り返り息を吸い込んだ。
「トウマ様。私はアンドロイドだけど、人間の心があるの。約100年前に死んで…そして、生まれ変わったの。あなたの曽祖父様の婚約者だったの」
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