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アンドロイド転生256

2117年12月17日
白水村:広場にて

「アオイ!ちゃんと先を読め」
「アオイ!動きが遅い!」
「アオイ!遊んでるのか?」
「そんなだったら止めちまえ!」

タケルが矢継ぎ早に叫ぶ。アオイはチアキの動きの速さについていけない。何度も倒された。もう3時間も柔術の訓練をしていた。対戦相手は次々と変わる。其々得意な手法があって戦い方が違う。

慣れた頃には相手が変わる。疲弊する事のないアンドロイドの身体でも、もう勘弁して欲しかった。「よし。休憩!」
アオイは地面に仰臥して伸びてしまった。

メモリがパンクしそうだ。身体の熱も高く、慌てて内部の冷却装置をフル回転にする。まずはCPUを冷やさないと…!サツキが水を差し出した。
「あ、有難う」

「大丈夫ですか」
「う、うん」
少しずつ水を飲んだ。肌に浸透させる為に。人間の頃ならゴクゴクと喉の音を立てたろう。

サツキが微笑んだ。
「まだ一本も取れてませんが、アオイさん…動きは良くなっていますよ」
それは褒めているのか…?慰めているのか…?正直は有難いけれど…。

「よし!次!エリカ!」
エリカか…。アオイは嫌な気分になる。エリカの技には何となく殺気を感じるのだ。タケルを好いていてアオイをライバル視しているのは知っている。それを加味しても訓練したい相手じゃない。

エリカが場に躍り出た。不敵に笑う。なんて楽しそうなのだろう…。ああ。どうしよう…!だが仕方がない。柔術をインストールした時点で覚悟は決めていたのだ。それもこれもシュウに逢うため。

いきなりアオイ目の前にエリカがいた。驚いて目を剥く。胸を突かれ身体が傾いた。体勢を立て直す間も与えずエリカは腹を殴打する。アオイは尻をついて倒れ込んだ。馬乗りをされる。

エリカの冷たい瞳がアオイを貫く。温かみなどないマシンの目だ。恐怖を感じた。顔を殴られそうになるのを何とか防御した。間髪を入れず腕が繰り出される。連打のスピードはあまりに速い。

「ま、待って!」
思わず叫んだ。だがエリカは止まらない。訓練だとはとても思えない…!やられる!反撃をしなくては…!アオイはエリカの両手首を掴んだ。

エリカはまさかアオイに止められるとは思わず目を見開いた。そして憎々しげな顔をする。
「てめぇ…」
2人の視線が絡んだ。


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