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アンドロイド転生92
2105年10月
カノミドウ邸 ガーデンにて
ドクターヘリが庭に降り立った。シュウの妻のユリコは車内に消えていった。ヘリコプターは動き出さなかった。万が一の場合オペが出来る設備が整っている。この場で緊急対応が可能なのだ。
パーティは一転した。アンドロイドの楽団が所在無げにしている。人々は眉根を寄せ彼女の容態を案じていた。子供らもそんな大人達の様子にすっかり呑まれてしまって言葉を発せなかった。
アオイはモネをトイレに連れていった後、庭に戻ってサツキ達の輪に加わった。モネは重苦しい雰囲気に不安を覚えてアオイを見上げ小声になった。
「カー?あれ、なぁに?」
「ドクターヘリです。奥様がご病気なんですよ」
シュウの周りには身内らしき者が集まっていた。ああ…シュウの家族…。アオイはその事実を目の当たりにして心が重かった。だめ!そんな事を考えてる場合じゃない。奥様が大変な時に…!
ヘリコプターからドクターアンドロイドが降り立ち、シュウと話しを始めた。彼は何度も頷いている。アンドロイドが車内に戻ると、シュウは来賓客に向かって頭を下げた。
「妻はくも膜下出血を起こしました。これからオペをしますので、パーティはお開きとさせて頂きます。申し訳御座いません」
客達は声を上げて心配の言葉を口にした。
執事アンドロイドが客を見渡した。
「皆様。車を呼びますので少々お待ち下さい」
10分後。客達は次々と車に乗り込み帰って行く。
「モネ様。帰りましょう」
「はぁ〜い」
サツキと別れの挨拶をしてアオイとモネは車に乗り込んだ。車窓からの赤い紅葉の景色を眺め、想いを馳せる。もう少しでシュウに打ち明けられそうだった。私がアオイだと。
言えたらどうなっていたんだろう?シュウは信じてくれただろうか。それともやっぱり輪廻転生だなんてアンドロイドの戯言と受け止めたのだろうか。言いたかった。あともう少しだったのに…。
ああ。またダメ…!こんな事を考えている場合じゃない。奥様が大変な状況なのに。くも膜下出血…。大丈夫かしら。奥様だって相当な高齢の筈。何があってもおかしくないのだ。
そしてシュウも…。私だって、モネの派遣が終われば廃棄される。本当に私達には時間がない。今度逢えるのは来春のミツキの誕生日会か…。アオイはガックリと項垂れて溜息をついた。
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