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アンドロイド転生728

白水村:リペア室

「エリカを…機能停止(死)する」
キリの宣言にリョウは衝撃を覚えた。だが心の奥底でずっと思っていた。エリカがいなくなれば良いと。彼女の存在が堪らなく不快だった。

エリカはタケルを想うあまりに常軌を逸した。自分を脅し、アオイ達を葬ろうとし、ハスミエマを追い詰めた。いや…潰した。エマは日本から去った。彼女の人生を変えてしまったのだ。

俺はなんて馬鹿な事をしたのだろう。保身の為に…エリカに協力をしたのだ。元々サキの裸を盗撮した事が始まりだ。いくら片想いだからとは言え、人として恥ずべき行為だ。

キリを見た。エリカを機能停止する決意に揺るぎはない。その瞳が物語っている。だがその役目はキリじゃない。決着をつける。それが責任だ。
「分かった…。俺が…やる」

キリは首を横に振った。
「私がやる。私はリペア室の責任者なの。ホームのアンドロイドの始まりはイヴでしょ。イヴを解体したからこそ、私はプロになったの」

そう。27年前。ホームに迷い込んだイヴをキリは救った。だが数年後、彼女の皮膚が劣化した。技術が未熟だったキリはイヴを助けられなかった。イヴは機能停止(死)を覚悟した。

キリはイヴのメモリをコンピュータにダウンロードした。いつか新しい身体を造ると言ったがイヴは拒否した。自分はメモリの存在になると。その場所が心地良いと言っている。

そしてその身をキリの研究に捧げたのだ。イヴを解体する事でキリの技術も能力も飛躍した。だからこそ今、ホームのアンドロイドは機能を損ねる事なく無事に暮らせるのだ。

キリの決意は固かった。
「プロになった以上、アンドロイドの責任は全て私にある。エリカを処分するのは私の役目」
「俺だってプロだぞ!」

「リョウがエリカを処分すれば…それは報復になる。私はあんたに復讐をして欲しくない。ね?リョウ?あんたには別の責任の取り方があるでしょう?じっくりと考えて」

リョウは呆気に取られた。そうか。俺がやれば復讐か…。そんな風に考えてくれるとはキリの思慮深さに驚いた。リョウは熟考する。キリがやる…。エリカを…殺す。だがしかし…。

「本当に…それでいいのか?」
エリカは確かに非道だ。生意気で悪知恵が発達し人間を尊重しない。アンドロイドとしてあるまじき存在だ。俺はアイツが大嫌いだ。

「キリは…いいのか?俺がやるのは全然構わないぞ。アイツは悪魔だ。迷いはない。だけどキリは可愛がっていたじゃないか。いいのか?本当に出来るのか?本当にいいのか?」

キリは笑った。
「良くないよ。でも覚悟の上だよ。人間として…プロとして…やる。それにエリカは…きっと幸せじゃないよ。歪んだ心は自身を縛る」

リョウはゆっくりと何度も頷いた。そうかもしれない。タケルに依存して…その想いに…囚われた。タウンの主人から自由になったのに、がんじがらめだ。まるで蜘蛛の糸のように。



※イヴがホームの一員になったシーンです

※エリカがホームの一員になったシーンです



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