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アンドロイド転生33

回想 2020年3月

「私が持って行くね」
家政婦がコーヒーとクッキーとポテトチップスをトレイに用意したのを見てアオイは立ち上がった。
「そうですか?有難う御座います」

シュウが週に2日、アオイの家に通うようになって2週間が経った。当初は久し振りのシュウとの顔合わせで緊張したものだが、次第に以前のように砕けた関係になった。

トレイを持って階段を上った。ミナトの部屋の前で耳を澄ます。くぐもった声は聞こえるが何と言っているか分からない。笑い声が聞こえた。ノックをして扉を開ける。

「楽しそうね。はい、お茶」
テーブルにトレイを置くとミナトは勉強机から席を立ちクッキーを摘んだ。シュウはコーヒーに手を伸ばした。綺麗な手。長い指。そして大きい。子供の頃によく繋いだ事を思い出す。

ミナトはトイレと言って部屋から出て行った。
「ミナトはどう?いい感じ?」
「うん。するする覚えていく。在学中に予備試験も司法試験もいけるんじゃないか」
「そっかぁ。先生が良いからね」

「アオイは内定をもらったんだろ?」
「うん。第一希望の商社に決まったの」
「じゃあ、時間ある?今度の土曜日付き合ってくれないかな?」

アオイは驚いてシュウを見つめた。
「え?」
アオイの胸が高鳴る。それってどう言う意味?デート…なの?もしかして…?

「展覧会のチケットを貰ったんだ。友達の絵も飾られるんだ」
シュウと出掛ける!一緒に!どこだって構わない!行く。絶対に行く。

「うん…。大丈夫よ…?」
嬉しいくせに緊張して澄まして応える。  
「よし。じゃあ10時に迎えに来る」
「わかった」

アオイの心臓がトクトクと音を立てる。聞こえてしまうのではと焦る。それよりも…ああ、どうしよう?ああ、何を着ていこう?ヒナノに相談しなくっちゃ。アオイは親友に神頼みだ。

土曜日。天気は上々。家族は快く送り出した。ミナトは小声で姉ちゃん、ガンバレと言った。弟は私のシュウに対する気持ちを知っている。話した事がないのに。ミナトの応援が照れ臭かった。

展覧会は盛況だった。シュウの友人の絵は写実的で素晴らしく目を見張った。他の作品も堪能した。でも何よりもシュウと同じ時間を共有している事が嬉しかった。

絵を眺める振りをしてシュウの横顔を盗み見た。子供の頃から知っているのに、いつの間にか…本当にあっという間に大人になってしまった。すっかり男の顔だった。

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