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アンドロイド転生279

2118年1月1日 夜明け前
白水村:ホームのリビングにて

アオイとタケルはホームに帰り着いた。ホームのリビングでは年始を迎える為に宴会が繰り広げられていた。充分に飲み食いをし、年明けを過ごした面々の大半は眠りに就いていた。

アオイ達に気付いたキリが笑顔を見せた。
「お帰り〜!年を跨いでご苦労さん!」
「キリ。狩が上手くいかなくてごめんなさい。私のせいで…」
「何言ってんの!アオイのせいじゃないよ」

アオイは首を横に振った。今回のターゲットはアオイの元婚約者だ。100年近くの時を経て漸く出逢えた。幸せだったがそれと狩の失敗は別だ。ホームに不利益を起こしたのだ。どんな罰でも受けよう。

キリはリビングの床に座って寛いでいた。アオイを手招きした。アオイは腰を下ろしキリと目線を合わせた。キリはアオイの肩を叩くとニッコリとした。何のわだかまりもない清々しい顔だった。

「悪い奴はいくらでもいるんだよ?お宝なんていつでも手に入る。今回の事なんて屁でもないよ。あんたのせいじゃない。気にするなって!」
「ほ、本当に?」

「今度は上手くやればいいよ!大丈夫!」
今度…。そうだ。柔術をインストールしたのだ。キリはアオイが今後も狩に出ると思うだろう。それは当然だ。自分の都合ばかりではダメだ。

実際のところ、アオイはシュウに逢いたくて今回限りのつもりだったが、そうはいかない。それはアオイにとって抵抗のある金品の強奪に参加せねばならないと言う事だ。

私は今後は夜の狩に出なくては…。それがラボから逃亡し助けてもらった恩返しでもある。今回の失敗を取り戻さねば。アオイは力なく微笑んだ。泥棒はしたくないが我儘を押し通すのは無理だ。

「うん。今度は頑張るね」
「アオイの活躍を期待してるよ!」
キリはアオイの肩をポンポンと叩いた。
「じゃあ休むね。キリ達は?」

キリは人々を見渡した。
「初日の出を見るんだって張り切ってるけど皆んな寝ちゃってるね。私も眠いや」
キリは大口を開けて欠伸をした。

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