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アンドロイド転生149

茨城県白水村の集落:中庭

「トワ!」
引き続きタケルとトワが一戦を交えているところにタカオが声を掛けてきた。
「倉庫に行け。宜しく頼む」

「オッケー」
トワは応答し、タケルを見た。
「こっち。来て」
タケルは頷いて着いて行く。

木造平屋の建物の扉をトワは開けると中に入った。タケルも続いた。室内は暗く倉庫のようだった。トワが直ぐに電気を点けた。目の前の光景にタケルは驚いて目を見張った。

天井まである何台ものオープンシェルフにはバラバラになったアンドロイドの部品が所狭しと積み上げられていた。これは一体なんだ?タケルは弾けるようにトワを見た。

トワは自慢げな顔をした。
「すげ〜だろ?アンタと似た身体を探しなよ」
「え?」
タケルは眉間に皺を寄せた。

「アンタはラボから逃げ出したんだ。あっちは取り敢えずは探すだろうよ。だから死んだって事にする。バラバラになって山にいるんだ。つまり身代わりを作るってこと」

そうか。トワの言う通りだ。逃げ出して清々したと思ったけれどそれで終わりじゃない。自分は死んだと言うか…機能停止になったと思わせなければならない。全く思いつかなかった…。

2人は30分かけてタケルに似た部位を探し袋に詰めた。正直言ってあまり気持ち良くはない。その後は1時間程山間を歩いた。渓谷に辿り着くと身代わりを放置した。

自分とよく似た身体が散乱して水に浸かっている様は気分が悪い。もしかしたら熊にでも襲われて実際にこんな姿になっていたかもしれないと思うと恐ろしかった。

「よし。こんなもんで良いだろ。行こうぜ」
トワは満足そうだった。
「これで本当に大丈夫なのか?バレないのか?ちゃんと調べるだろ?」

トワは手を振って笑った。
「調べない、調べない。タウンの奴らはアホだってキリが言ってたろ?アイツら、上っ面だけで生きてるからな。ボーッとしてんだよ」

そうだ。現代の人々は物事は深く追求しないが信条だ。それで世の中は回っているのだ。全くお気楽な連中だ。タケルは生まれ変わって1番驚いたのがそれだった。時代は変わったのだ。

「それにしても…あの部品はどうやって?造ったのか?わざわざ?この為に?」
トワはニヤリとした。
「横流ししてるんだよ。ラボの連中が」

タケルは目を見開いた。トワは続ける。
「アンドロイドなんて古くなるとすぐに廃棄するだろ?それをホームで買ってんの。金が欲しい奴はいくらでもいるんだ」

トワは宙に手を伸ばして空を見上げた。指の間から漏れる陽の光に目を細めた。
「そのうち分かるよ。世の中には光もあれば闇もある。アンタはまだ光しか見てないんだろ?」

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