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アンドロイド転生264

深夜 カノミドウ邸

チアキはアオイの手を掴んだ。
「行くよ!」
アオイは抗えず足をもつれさせたものの、歩き出した。帰るしかない。帰るのだ…。

シュウが手を伸ばした。
「待て!アオイ!まだ行くな!」
アオイはシュウを振り返った。彼の瞳が縋っていた。ああ…行きたくない!まだ話したい!

アオイはチアキの手を振り解いた。トウマに自分の正体がバレたのだ。もう後はどうとでもなれだ。「チアキ。行って!私は行かない。後で1人で帰る。皆んな先に行って!」

そう。シュウと100年ぶりに出逢えたのだ。今ここで離されたらもう2度とチャンスはないだろう。
「馬鹿な事を言わないで!」
「お願い!まだ話したいの!」 

「アオイ!命令よ!行くよ!」
「あなたはリーダーじゃない!」
「じゃあタケルが言えば聞くのね?」
アオイは言葉に詰まった。

ケイは呆れた顔をした。アオイは10分で良いと言ったじゃないか。馬鹿なことを…!
『ケイ。もう行くぞ。終わりだ』
ケイの内側からタケルの声が響いた。

『問題が起きた…』
『何をやってる?』
『アオイが帰らないって言ってる。どうする?』
『連れて来い』

ケイがアオイ達の前にやってきた。
「行くぞ」
「いや!まだ話したいの!お願い!」
アオイは必死だった。

チアキがアオイの頬を叩いた。
「馬鹿!ルール違反だよ!」
アオイはこうなったら力技だと決めた。チアキに殴り掛かる。チアキは難なく避けた。

「チアキ!お願い!」
「ダメだよ。約束でしょ」
「分かってる…分かってるけど…行きたくないの…!もう少しだけ側にいさせて…!」

シュウは…シュウはあんなに痩せてしまった。顔色も良いとは言えない。本当に心臓が弱っているのだろう。最期の時は近いのかもしれない。今ここで別れたらもう2度と逢えない…!

こうなったら戦ってでも思い通りにする!アオイは攻撃の態勢になった。早技を繰り出し、チアキを壁に追い詰めた。チアキは不敵に笑った。
「何年の差があると思ってるの?」

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