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アンドロイド転生244

白水村:リビング

サツキがリペア室から戻って来た。
「キリの話はなんだった?」
「それは私とキリ様のお話です」
「あ…そうだよね。ごめん」

サツキは真面目な顔をする。
「はい。みだりに他言してはなりません」
「うん…そうだね…」
でもアオイはどうにかして聞き出したかった。

サツキは夜の狩をするのか?柔術はインストールするのか?何て聞けば打ち明けてくれるだろう?
「インストールは…する?」
結局はダイレクトに質問するしかなかった。

サツキは微笑んだ。
「致しません」
アオイは目を見開いた。応えてくれるとは思わなかった。こういう寛容さがサツキにはあるのだ。

アオイは上目遣いになった。
「柔術は…しないのね?」
「はい」
では夜の狩もしないという事だ。

アオイは嬉しくなった。
「そっかあ!じゃあ!何もしないのね?私もね!しないの。泥棒なんてしたくないもん」
「そうですか」

「サツキさんもしたくないんだよね?」
「お応えしかねます」
「あ、いいの、いいの。応えなくても。私はサツキさんが同じで嬉しいだけ」

サツキは微笑んだ。
「アオイさんが嬉しいなら私も幸せです」
サツキらしい言葉にアオイはまた嬉しくなる。
「ありがと!2人で幸せになろうね」

サツキはニッコリとした。
「お子様達も幸せにします」
「そうだね!そうしよう!」
「では幸せにしに行きましょう」

2人がプレイルームに行くと、チアキが子供達の前でピアノのホログラムを投影させて弾いていた。保母だったチアキの得意分野だ。チューリップ。キラキラ星。子供らは踊り出す。

その輪の中にアオイとサツキも加わった。するとミオがやって来た。
「皆んな楽しそうだね!私も混ぜて!」
幼児の手を繋ぎピョンピョンと飛び跳ねた。

子供らは歓声を上げ、母親達も一緒になって踊りに加わる。育児に参加しなかったサクラコとは違う。ここでは当たり前なのだ。アオイは嬉しかった。楽しかった。満面の笑顔だ。

私とサツキさんはナニーとして生きていけば良い。それが自分の幸せなのだ。第二の生で得た子守りというマニュアルはアオイに喜びを与えた。モネだけでなく子供達の世話が生き甲斐だった。

サツキがやって来てから、アオイは快活になった。ホームで過ごして1年半。ずっと孤独を感じていたが、日増しに明るくなって来た。サツキを救って良かった。心から思った。


3部 完

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