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アンドロイド転生485

白水村集落:リペア室

恋人のルークに抱き締められミオは喜びに溢れた。念願の大人の身体を得られたのだから。
「私は生きられるの。ずっと…ずっとよ」
だが幸せを噛みしめたのは一瞬だった。

ミオのメモリにフォルダが発生した。ゲンがミオに仕込んだウィルスはイヴによってデリートされたもののコピーを作り、クラウドより上層階に格納されていた。それが落とされたのだ。

イヴがいち早く気がついた。
『キリ。ミオを精査して下さい。彼女のメモリにウィルスプログラムがあります』
キリは慌ててミオとコンピュータを繋いだ。

キリは目を丸くした。
「本当だ。フォルダがある…!」
次いで眉間に皺を寄せた。
「カウントダウンしている。残り…約48時間…!」

リョウが不敵に笑った。
「こんなの削除してやる!俺に任せろ!」
リョウもコンピュータを立ち上げた。彼の目前にスクリーンホログラムが浮かんだ。

リョウの指先が猛烈な勢いで動いた。プログラミング言語が羅列される。自信ありげだった彼の顔が険しくなった。
「おい?イヴ!前回のと少し違うぞ?」

イヴが頷いた。
『ええ。自然界のウィルスが変異するように、このプログラムも変わったようです』
キリとリョウは顔を見合わせて舌打ちした。

リペア室の扉がスライドした。キリの夫のタカオが部屋に入って来た。笑顔でミオを見た。
「お!目が覚めたのか!おお!美人だな!」
ルークの背を叩いて白い歯を見せる。

だがタカオは自分の喜びとは裏腹に皆が神妙な顔をしている事に気が付いた。
「ん?どうした?何かあったのか?」
全員がゆっくりと頷いた。

キリが憎々しげに口を開く。
「クソ野郎はどこでもいるんだ…」
ミオの顔が引き攣った。
「ゲ、ゲンは苦しめって言った!」

リョウが宙空のイヴを見上げた。
「イヴ!俺じゃ無理だ。やってくれ」
イヴは既に触手を伸ばしていた。前回と同じモノなら簡単にデリート出来るが新手である。

イヴは顔を顰めた。
『今回のプログラムも厄介です。時間内にデリートが出来なければ、タイムリミットとなりウィルスは解凍されて発動されるでしょう』

ミオが叫んだ。
「いや!いやよ!そんなのイヤ!せっかく大人になれたのに!生まれ変わったのに!私死ぬの?ねぇ?イヴ!どんなウィルスなの⁈」

イヴは首を横に振った。
『発動されない限りどんなものか不明です』
ルークがイヴを見上げた。
「頼む。お願いだ。助けてくれ!」

だがイヴは簡単に希望を持たせたりはしない。
『出来る事は何でもします。ですが覚悟をしていて下さい。相手はかなり手強いですから』
ミオはしゃがみ込んで泣き出した。

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