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アンドロイド転生242

アオイとサツキの部屋

深夜。アオイは自室でベッドに横になっていた。隣を見るとサツキがスリープモードで休んでいる。アオイは微笑む。今日から彼女は家族だ。本当に姉になったのだ。嬉しくて堪らなかった。

今から93年前。私は…突然命を奪われた。そして転生した。だが何故かアンドロイド。人間に従事する立場になってしまった。遥か未来の世界で寂しくて不安で怖かった。ずっと孤独だった。

そんな中いつもサツキは温かった。私の境遇を理解して力になってくれた。泣いてばかりいる私に寄り添ってくれた。彼女の存在がどんなにか助けになっただろう。いつか恩返しをしたいと思っていた。

今日サツキは派遣期間を終えてランドラボに戻ってきた。廃棄になる運命だった。だが無事にラボから逃げ出して禁止機構をデリートした。これでサツキは自由だ。いくらでも生きられるのだ。

何もかもが万事順調に運んで本当に良かった。まさか、ラボでの危機的状況から助かるとは思わなかった。幸運と、チアキの柔術と、自分の機転が良かったのだと思う。

だけど人間の手首を折るだなんて物騒な言葉が出るとは…。気弱な自分の性格からは考えられない。けれど…私はあの時、本気だった。本当に実行するつもりだった。出来ると思った。仲間の為なら。

本来ならアンドロイドは暴力行為に禁止機構が働いて犯す事は出来ない…。どうやら、やっぱり私は人間の心の方が強いらしい。アンドロイドの服従性を越えて自己の欲望を果たせるのだ。

そうなると…タケル…タケルも可能なのだろうか?殺人と暴力行為が…。夜の狩では人間を傷つけず平和的に金品を強奪すると言うが、今後…危険に陥った時にタケルは破壊行動を起こすのだろうか?

こ、怖い…。それでは殺人マシンになってしまう。私はそんな存在になりたくない…!もう2度と人に手を上げる事はよそう。何があっても絶対に…!アオイは恐怖に震え枕を抱き締めた。

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