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アンドロイド転生97
10月
老人施設
アオイは両手を合わせて握ったり開いたりした。緊張していた。
「例えば…こんな夢物語はどうでしょうか?人は死んでもまた生まれ変わるとか…」
アオイは上目遣いになった。
「ご興味はありますか?」
「そうねぇ。また生まれ変わるとか…どうかしらねぇ。もう一度若くなれるなら何がしたいかしら…」
宙を見て遠い目をした。シュウのように輪廻転生を否定しなかった。それは良い傾向に思えた。ヒナノはアオイに目を向けた。
「あなたはずっとそのままね」
アオイは頷いた。
「そうです。生まれた時から18歳です。成長しません。でも、心は学んでいきます」
「それこそが人工知能ね」
介護アンドロイドが2人の前にやって来た。アオイは慌てる。待って。お願い。話をさせて。
「ヒナノ様。オヤツをどうぞ」
お茶とお菓子をテーブルに置いた。
「有難う」
アンドロイドはアオイに顔を向け微笑んだ。
「あなたはどちら様ですか?」
「私はナニーアンドロイドでサヤカと申します。ヒナノ様とお話をしています。宜しいですか?」
アンドロイドはヒナノを見た。
「ヒナノ様は宜しいのですか?」
「ええ。何か夢物語のお話をしてくれるみたい。楽しんでいるわ」
アンドロイドは納得して去っていった。アオイは胸を撫で下ろした。シュウにしろヒナノにしろ、話す事は大変だ。アオイはヒナノに頭を下げた。
「有難う御座います」
時間を確認する。モネが昼寝から目覚める前に帰らなくてはならない。ヒナノを驚かせないように話すのは今日は難しいだろうか。
アオイは息を吸い込んだ。
「私は…目覚めた時に…ある記憶がありました…」
ヒナノは軽く小首を傾けた。ああ。ヒナノ。信じて…!冷静に受け止めて。
「か、神様が私に言ったのです。生まれ変わりたいか?と。私は…はいと応えました」
ヒナノは眉根を寄せた。
「なんのお話?夢物語じゃないの?」
アオイは深呼吸をしてヒナノを見つめた。
「それで…私には神様にお願いする前の記憶もあるのです。ニカイドウアオイ様の記憶です」
ヒナノは訝しげな顔をした。
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