アンドロイド転生175
TEラボ:エントランス
タケルが助けにやって来たが、6体のアンドロイドは動かなかった。エリカだけがタケルの後をついて走り出した。2人はTEラボを背に森の中に消えた。間もなくラボから男性職員がやってきた。
電子ノートを見ながら彼は眉間に皺を寄せた。
「あれ?7体じゃないの?誰がいないんだ?…エリカ?おい?エリカを知らないか?」
「あそこに走って行きました」
森を指した。
職員は舌打ちをした。
「またか。まぁ、分かるからいいや」
エリカに内蔵されているGPSで居場所など直ぐに特定できるのだ。
数年に1体程度逃げ出すアンドロイドがいた。どうせ廃棄するのだからいなくなっても構わない。だが信用問題もある。機能停止でも良い。崖からでも落ちてバラバラでも良い。発見せねば。
タケルは森に入ると間も無く足を止めた。エリカも倣う。タケルは空を見上げると掌を上に向けてドローンを収めた。次いで自分の頸の無線ケーブルを抜き挿しした。
「名前は?」
「エリカです」
「俺の名はタケルだ。いいか?俺を信じろ」
エリカは眉根を寄せた。
「GPSを遮断するためにエリカのCPUを壊す。後で直す。さぁ、首を出せ」
有無を言わせぬ口調だった。
「え…でも…」
エリカは躊躇したがタケルに肩を掴まれ頸にケーブルを挿し込まれた。その瞬間エリカは強制終了され力なく倒れた。タケルは再度ドローンを飛ばしエリカを担ぐと山を降り始めた。
担当者は電子ノートを見てエリカを探していた。いきなり信号が消えたので、渋い顔をした。
「消えちゃったよ。どうする?」
仲間の職員をチラリと見た。
「探せないだろ。まぁ、良いんじゃない?消えたって事は川にでも落ちて終わったんじゃないの?そのうちまた見つかるよ。バラバラになって」
「だな」
職員達は呑気だった。物事は悪い方向にはいかない。深く追求しなくても何とかなる。そんな時代の風潮だった。それがタケルを始めホームのアンドロイド達が逃げ仰せている理由だ。
タケルは3時間かけてホームに到着した。エリカをリペア室の寝台に横たわらせた。今集落には8体のアンドロイドがいる。その内の1体は肉体がないメモリの存在。今日からエリカも家族だ。
「お帰り〜!」
キリが椅子から立ち上がって電源が落ちたエリカを覗き込んだ。
「わぁ!天使みたい。…じゃあ、早速やるね」
エリカの瞼を摘んで開いた。
「ブルーか。よし!菫色にしよう」
キリはニコニコと微笑む。どんな子なんだろう。目覚めるのが楽しみだ。
これからエリカの片方の瞳を変えた後、禁止機構をデリートする。彼女は自由になれるのだ。従兄弟のリョウもやって来た。2人はエリカの頭蓋内を分解し始めた。
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