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アンドロイド転生117

2113年9月(別れまで6ヶ月)

東京都港区:サクラコの住居

「モネ。おめでとう」
夕食のテーブルの席でサクラコが青い小箱を差し出した。モネが不思議そうな顔をして母親を見た。アオイはサラダを盛っていた手を止めた。ザイゼンはサクラコのグラスにワインを注いでいた。

「大人になったお祝い」
モネは先月初潮を迎えたのだ。モネはチラリとザイゼンを見て気まずそうな顔をしたが、サクラコから受け取ると中身を取り出した。ブルーの小石がついたネックレスだった。

サクラコは微笑んだ。
「3月生まれの誕生石はアクアマリンなんだって」
色合いは海のように涼しげだ。透明度が高く美しい宝石にモネは白い歯を見せ、瞳を輝かせた。
「ママ!嬉しい!有難う!着けて着けて!」

サクラコがモネの首に巻いた。胸元が煌めく。彼女の自信と美しさが割増されたようだった。
「ど、どお?」
頬が緊張で赤らむ。そんな恥じらいが愛らしい。

アオイは拍手した。
「モネ様。とっても良くお似合いです!」
ザイゼンがニッコリと微笑んだ。
「お姫様にはピッタリですね」

サクラコも満足気な顔をした。
「大人になったんだから宝石は持つべきよ。特に女性にとっては欠かせないものね。それにね?誕生石は御守りになるらしいよ?大事にしてね」
 
モネの瞳が喜びに見開いた。
「え!御守りなの?凄い!うん!約束する!」
モネの笑顔は宝石に負けず劣らず煌めいていた。サクラコは愛おしげに娘を見つめた。

モネは突然閃いたように目を丸くした。
「あ!そうだ!カーも3月生まれなんだよね?」
アオイは悪戯っぽく笑った。
「ええ。そうですよ。2102年3月15日です。モネ様のご誕生の5日後に生まれたんですよ?」

モネは益々目を丸くした。
「えー!私の方が年上なの?信じらんない!」
「小さなお姉様ですね」
サクラコとザイゼンが笑った。

アオイは感慨深い気持ちになった。そうだ。よく考えればこの中で私が1番年下でありながら、実は80年前の遥か過去を知っている誰よりも年長者でもあるのだと改めて実感した。

サクラコが溜息をついた。
「ああ。私はもう41歳。そのうちザイゼンを越えちゃうのよねぇ」
ザイゼンは50歳設定の紳士モデルだ。

モネは母親の真似をした。
「私もすぐにカーを越えちゃうのよねぇ」
モネは11歳。18歳設定のアオイをいつか越す。4人は顔を見合わせ笑い合った。

その後、モネはネックレスをとても大事に扱った。パーティにも特別な時も必ず着けていた。ハロウィン。クリスマス。年末年始。バレンタイン。雛祭り。小石は持ち主を得て益々光り輝いていた。

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