見出し画像

アンドロイド転生89

2105年7月
カノミドウ邸

「サツキさん…ダメだった…」
アオイ達はテーブルに着いていた。モネは念願のケーキを口にして、大喜びでハルと一緒に頬張っている。サツキはナツを抱いてあやしていた。

サツキは眉根を寄せた。
「ダメだったとはどういう事ですか?」
「どう話して良いか分からなくて…だって…いきなりアオイです!なんて言えないでしょ?」

「まぁ…そうですね…」
「ね?ビックリして体調を崩したら困るし…。だけど…うまく言えなくて…」
「そうですか」

アオイは溜息をついた。
「輪廻転生の話をしてみたの。そしたら信じないって。そんな事はあり得ないって」
「そうですか」

「私の事をアンドロイド…って言ってた。シュウにしてみれば私はただの…マシンなのよね」
サツキはしっかりと頷く。
「それは事実ですね」

アオイは人々を見渡した。皆笑顔で楽しそうだ。
「人間と私は違うの。遠い存在なんだと改めて実感したよ。なんか馬鹿みたい。シュウと会いさえすれば何とかなるって思ったの」

サツキは真顔になった。
「サヤカさんは馬鹿じゃないですよ」
「有難う…。でも…夢を見た私が浅はかだったの。もう無理かもしれない」

「諦めたらそこで終わりです。サヤカさんが生まれ変わったのも旦那様がご存命だったのも何かの縁です。またの機会を信じましょう」
「またの機会なんてあるかなぁ…」

サツキは頷いた。表情が真剣だった。
「トウマ様の10月のお誕生日会がチャンスです。きっと大丈夫ですよ」
「サツキさん…」

アオイは驚く思いだった。サツキの思考は時には人間のようだ。そしてアオイに希望を持たせてくれる。有り難かった。サツキは続けた。
「また手紙を書くのです」

「会ってくれなかったらどうしよう…」
「生前の想い出話しを書いてみては如何でしょう?旦那様が興味を引くような」
そうか!それは良いかもしれない!

アオイは力強く頷いた。
「分かった。書いてみる!」
アオイはサツキに感謝していた。どんな時も応援してくれてアイディアを出してくれるのだ。

(手紙の文面)
『先日は失礼を致しました。ニカイドウアオイ様の言伝が御座います。“シュウちゃんのお嫁さんになる”と宣言した夏祭りの時の事です。またお時間を取って頂けないでしょうか。宜しくお願い致します』


3ヶ月後 2105年10月

トウマの10歳の誕生日会が催された。アオイはナナエに手紙を渡した。今回は子供達に邪魔をされぬようにケーキを食べてから事を起こした。モネは満足したようだ。よし。これで大丈夫だ。

「シュウお祖父様にお願いします」
「え〜!またぁ?」
「東屋にいます。どうか宜しくお願いします」
唇を尖らせたものの元気良く走って行った。

東屋でアオイは待った。モネに電子ノートとペンを与えると楽しそうに描き始めた。お願い。今回はもっと時間を頂戴…!間もなく屋敷を背にシュウとナナエがやってきた。アオイの胸が高鳴った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?