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アンドロイド転生945

2118年12月24日
白水村集落 ダイニングルームにて

ホームのクリスマス。昨年とは違って人が減ってしまった。若者達が国民となり街に旅立ったのだ。それでも残った人々は大いにパーティを楽しんでいた。キリもその1人である。

彼女は周囲の人を見渡した。滅亡派と存続派で春に議論を交わし、滅亡派が勝利してホームは終わる事になってしまった。だが存続派はそれを望まず若者達を街に送り出した。

息子のルイを始め、街に出た21人は其々の場所で輝いている。いつかタウンの人間と結ばれて平家の血は続いていくだろう。それが子孫として…家族としても嬉しかった。

もしかしたら村ではまた議論が交わされるかもしれない。滅亡派だった者が転身する可能性だってあるのだ。それならまた話し合えば良い。それが人間なんじゃないの?

だって心は変わるものでしょう?古来から人は試行錯誤を繰り返して生きてきたんだもの。そうやって進化してきたんじゃない…?私達はまだ成長段階なのだ。無限大なのだ。

ふと気付く。ツリーの横に座っている少年に。ヤマトだ。ルイと同い歳の16歳。彼は滅亡派の親の意向に従ってホームに残った。だが誰よりも街に憧れている。だったら行けば良いと思う。

まだ未成年だけれども成人したら本人の自由ではないか。ヤマトにもチャンスを与えたい。ルイのタウンでの楽しそうな話を聞く度に街に送り出して良かったと思うから。

夫のタカオがキリの目線を追った。
「なんでヤマトを見てるんだ?」
「うん。分かるでしょ?私の気持ち」
タカオもヤマトを見つめて頷いた。

「子供は未来の宝だ。それを親の都合で人生を摘み取ってはいけないと思う。だが俺達がヤマトについて口出しは出来ない。けれど…ヤマトが成人したら…変わるかもな」

キリはニッコリとして夫を見た。
「あんたもそう思う?」
「そうさ。誰だって自由なんだ。自分の人生をどう生きたっていいさ」

アンドロイドのサツキがやって来た。
「皆さん。楽しんでいて私は嬉しいです」
キリは悪戯っぽい顔をした。
「アオイがいなくて寂しいんじゃない?」

サツキは微笑んだ。彼女には自我の芽生えはないがそれでもいつも心があるように見えた。穏やかで優しく他人に共感するのだ。アオイにとってサツキは親友であり姉なのだ。

「はい。でもアオイさんがモネ様と一緒にまた暮らせて私はとても幸せです」
「そうだねぇ。2人は大泣きしてたもんね」
キリはアオイとモネの病院の再会を思い出す。

モネが山中で遭難し、タケルが助け出した。翌日の朝。アオイとサツキが病院にやって来た。まさか息子の恋人がアオイの育て子だと思わなかった。運命とは奇跡を起こすものだ。

キリは宙空を見上げた。
「アンドロイド達も色々あったねぇ。チアキは保母に戻ったし、アリスはリツとラブラブ。あとは…タケルがね…元気だといいね」

全員が頷いた。エリカに暴力を働いて村から去った。たった1人で今はどうしているのか。元人間の彼はやはり寂しいかもしれない。時々心配になって居場所を知りたくなる。

イヴに訊ねれば人工衛星をハッキングして即座に判明する。だがタケルはそれを望まないだろう。自分達が生きるように彼もどこかで生きている。ただ願うしかないのだ。幸せであれと。


※アオイとモネの再会のシーンです


※タケルがホームから去ったシーンです


※ヤマトのシーンです


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