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アンドロイド転生280

アオイとサツキの部屋

アオイが部屋に入るとベッドで横になっていたサツキはスリープモードから目覚めて起き上がった。
「お帰りなさい。どうでしたか?旦那様にはお逢い出来ましたか?」

「うん。逢えた。やっと私がアオイだって打ち明けられたの…!」
サツキは小さく拍手をした。
「良かったですね!旦那様は如何でしたか?」

アオイは目を落とした。
「久しぶりに見たら随分痩せてた。心臓があまり良くないみたい。本当に今回が最後だった」
「お具合が悪いのですか。それは心配です」

「うん…。でも、でも私がアオイだって信じてくれたし嬉しかった」
「私も嬉しいです。アオイさん。やっぱりご縁がありましたね。いつか叶うと信じてました」

アオイは眉根を寄せた。
「でもね…。シュウの曾孫のトウマ様に私の事がバレちゃったの。足を怪我したから旅行は中止にして家にいたの。結局奪ったダイヤは返すことになっちゃった。うまくいかないね」

サツキは優しく微笑んだ。
「過ぎた事です。それよりも旦那様とお逢いする事が本願でそれが叶ったのが良かったです」
「有難う。そう言ってくれるとホッとする」

サツキは首を傾け、アオイを見つめた。
「タケルさんとはどう過ごしたのですか?」
「あ!そうそう!富士山にね?登山に行ったの」
「それは良い経験ですね。楽しかったですか?」

アオイは押し黙った。楽しかった?どうだろう?いや、楽しかった。気分が晴れ晴れとした。だが今になって緊張してきた。苦手なタケルと随分長い時間を過ごしたのだ。

老夫婦にカップルだと間違われた。タケルの柔かやな笑みが思い出された。
「タケルは最初凄く怒ってた。村長だったら私を追い出してやるって」
「まぁ…!」

「でね…?富士山に着いたら機嫌を直して別人のようにニコニコとしてた。あ…あのね?人間にね?カップルだと思われたんだよ?」
「それは素敵ですね。2人はお似合いですから」

アオイは目を丸くした。
「え?まさか!エリカの方が良いでしょ?」
「エリカさんは一途過ぎます。タケルさんはそれを重いと思うでしょう」

アオイは繁々とサツキを見た。本当にサツキは物事をよく見ている。しかも理解度が深い。アオイは深く溜息をついた。
「アンドロイドの恋心は強いね」

サツキは頷く。
「はい。エリカさんは一途です」
「うん。ビックリしちゃう。でも、私はエリカに幸せになってもらいたいの」

サツキは真剣な目をした。
「私はエリカさんが怖いです。あの方は時々私達を睨んでいます」
「え?睨んでる?本当に?」
「はい」

全然気が付かなかった。どうして睨むの?タケルとは距離を置いているのに。エリカは人間の心を持つ者同士が繋がる事を恐れていると言っていた。私とタケルはそんな事にはならない。

「なんで分かってくれないのだろう…」
「やはりタケルさんとアオイさんが元人間同士というのが怖いのでしょうね」
エリカの方が余程怖いとアオイは思った。

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